魚住哲宏+魚住紀代美
アーティストステートメント
ベルリンの街にはよくゴミが落ちています。いわゆる本当の生活ゴミから日用雑貨、家電、家具に至るまでよく落ちています。道端にポツンと取り残されたガラクタはポっと切り離された他人の生活空間の様な佇まいです。そこに私たちは日常音と音に反応して点灯する光を組み合わせて、インスタレーションを制作しています。ガラクタと音と光を空間に配置することを、言葉を使わない一つの言語システムのように扱い、物語を構成しています。 私たちは今、この曖昧な言語システムを使って様々な意図の物語を共有できると考えています。
元お茶屋さんで住宅に改装され、今は誰も住んでいない家、家に残された生活の雰囲気の中に金沢で集めたガラクタと音と光を非常識な文脈で配置します。私たちはそこで日常生活での理解を問い直す経験を期待しています。私たちはよく“これがどんな経緯であるのか”、“これが何故ここにあるのか”疑問を持たずに“普通”もしくは“よくあること”と認識して暮らしています。よく親しんできた、当然のような先入観から離れて、独自の緩やかな認識を作りたいと考えています。
緩やかな許容範囲での小さな気づきを通して、何が本当の意味での家なのか、考えてみたいと思います。
魚住哲宏 魚住紀代美
魚住哲宏 1980年愛知県生まれ。2007年愛知県立芸術大学大学院彫刻専攻修了。
魚住紀代美 1981年和歌山県生まれ。2004年京都造形芸術大学美術工芸学科彫刻専攻卒業。
2004年から共同制作を開始、2007年にベルリンに移住。2012年のアイスランドでのレジデンス以降、日常の些細な出来事を集めること、再構成することをテーマに作品を作っている。会場に詰め込まれた物語を来場者が自由に組み合わせることで、そこにしか無い個々の視点で物語を再生させていく。