変容する家 | 東アジア文化都市2018金沢

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伊能 一三

INO Ichizo
《へいわののりもの(しか)》2011, © Ino Ichizo, Courtesy of the artist

《へいわののりもの(しか)》2011, © Ino Ichizo, Courtesy of the artist

アーティストステートメント

私たちも含め、あらゆる生き物の姿かたちというのは、何かを乗せて運ぶ「のりもの」ではないかと考えています。「何か」というのは命とか魂と呼ばれるようなものです。その「のりもの」がどこへ進むのか、それは私たち次第でもあり、また運命なのかもしれません。ただ、できるだけ「へいわののりもの」であるように願っています。私たちの暮らしとともにいる動物たちや子どもたちは、まさに「へいわののりもの」であり、私だけの「仏像」でもあります。その昔、「仏像」は、近親者の病気やケガが治るのを祈願したりなど、ごく個人的な理由で作られてきました。毎日の暮らしのなかでつのる思いを乗せ、「へいわののりもの」たちはそこに佇み、その先をぼんやりと見つめます。そこには金沢で暮らす私にとっての日常があり、未来があります。

伝統的な素材で扱いにくいと思われがちな漆ですが、可塑剤として土を混ぜて盛りつけたり、接着剤のようにして貝殻や金箔を貼りこんだりと自由な素材だと感じています。色も赤や黒だけでなく、多彩な顔料でいろいろな色を作ることができます。漆ならではの光沢や質感は高貴ですが、日常の器や箸にも使われ、暮らしの中にある素材として親しみやすさもあります。そういった漆の複雑な魅力に惹かれています。毎日暮らすことのように淡々と、「へいわののりもの」を作り続けていきたいと思っています。

伊能一三

1970年神奈川県生まれ、石川県金沢市在住。2000年東京藝術大学大学院美術研究科漆芸専攻修了。2005年金沢卯辰山工芸工房修了。2011年「Urushi-traditionelle japanische Lackkunst」Musterring International (ドイツ)、2014年「Collect 2014」サーチギャラリー(ロンドン)、2016年「2016 福州国際漆芸ビエンナーレ」福州漆芸術研究院(中国)、「International Contemporary Ottchil Art Exhibition 2016」統営漆美術館(韓国)など国内外で作品を発表している。