期間:
2017年6月21日(水)
18:30〜20:30(開場18:00)
2017年6月21日(水)
18:30〜20:30(開場18:00)
金沢21世紀美術館
プロジェクト工房
1,000円(タイ料理の軽食・ドリンク付)
50名
申込:
※定員に達した為、申込み受付を終了させていただきました。
金沢21世紀美術館 学芸課
TEL 076-220-2801
自治区04はトークシリーズ〈In a Grove〉の第2回目として、「ゆらぐ境界」について考える。
多国籍資本の流入によって急速に都市化と欧米化の波にさらされるアジア。モノや金の流れと共に人の移動も頻繁になり、交わることで国民国家という枠組みだけでは、互いの事情をすべてを括ることは難しくなっている。政治、文化、宗教、民族、ジェンダーなどに関わる価値観に大きな変化が訪れ、個人の「私」は、何によって何者とされるのかというアイデンティティの問題も、より複雑さを増している。
たとえば、異国に暮らす人々と日本に暮らす私たちとは、国民国家の境界によって、はっきりと区別できるのか。あるいは、男と女、内と外など、対立する様々な2項を区別する境界は、現代において大きな意味を持ち得るのか。そして境界を挟んだ対立や無理解は、どのように隙間を埋め理解しあうことができるのか。そして、問題は当事者だけの問題なのか。
日々のニュースは、誰にも関係のない孤立した「私」も「国」も考えられないことを示している。
こうした状況を、たとえばタイと日本の場合として、現代タイを生きる個人の混沌としたアイデンティティと内面を鮮やかに描き出すことで国際的な評価を得る作家ウティット・ヘーマムーンと、日本の若者のとりとめもない日常を現代演劇へと昇華したチェルフィッチュ代表作『三月の5日間』(2004年)で一躍脚光を浴び、日本現代演劇のトップランナーとして国内外で注目を集める演劇作家の岡田利規の2名をゲストに招く。新たなプロジェクトを始動しているふたりと、同じ世界を生きる同時代の芸術の「いま」について参加者とともに考えたい。
※逐次通訳付(タイ語ー日本語)
1973年横浜生まれ、熊本在住。演劇作家/小説家/チェルフィッチュ主宰。活動は従来の演劇の概念を覆すとみなされ国内外で注目される。2005年『三月の5日間』で第49回岸田國士戯曲賞を受賞。同年7月『クーラー』で「TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD 2005ー次代を担う振付家の発掘ー」最終選考会に出場。07年デビュー小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』を新潮社より発表し、翌年第二回大江健三郎賞受賞。12年より、岸田國士戯曲賞の審査員を務める。13年には初の演劇論集『遡行 変形していくための演劇論』、14年には戯曲集『現在地』を河出書房新社より刊行。16年よりドイツ有数の公立劇場ミュンヘン・カンマーシュピーレ(ドイツ)のレパートリー作品の演出を3シーズンにわたって務める。
1975年タイ中央部サラブリー県ケンコーイ生まれ。バンコクのシラパコーン芸術大学絵画彫刻版画学部を卒業。2009年に発表した3作目の長編小説『ラップレー、ケンコーイ』(The Brotherhood of Kaeng Khoi)にて作家としての地位を確立し、同年の東南アジア文学賞とセブン・ブック・アワードを受賞。さらにCNNGoにて、タイで最も重要な人物の一人として掲載された。2013年には京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAで実施されたアーティストワークショップ「Work in Memory」に、映画監督のアピチャッポン・ウィーラセタクンとともに招聘講師として参加。同ワークショップに参加した日本のアーティスト6名との交流を通じて執筆した中編小説『残り香を秘めた京都』を発表。2014年から2015年までタイの文芸誌『Writer Magazine』およびタイ国文化省現代芸術文化局発行の文芸誌『Prakod』の編集長を務める。
いま、タイの現代小説家ウティット・ヘーマムーン氏の最新作を演劇化するプロジェクトを進行させています。ひとりの芸術家の性愛遍歴が、タイの波乱に満ちた現代史と重ね合わせられつつ綴られる、という内容を持つこの小説では、国家というコンセプトと、身体というコンセプトとが重ね合わされています。とても挑発的です。
なぜタイのことが描かれている小説を演劇化しようとしているのかといえば、それがタイ人でないわたしたちにも他人ごとではない、大きな射程を持った問題を提起し得ると思うからです。それは、設定されている境界について、です。国家の境界やセクシャリティの境界など、私たちは様々な境界を設定して生きています。そしてそのことが様々な問題をもたらしています。
なので私はこの演劇を、舞台と客席の境界についても扱うために、それが強固な場所である劇場ではない、美術館のような空間で上演しようと考えています。
ー岡田利規
このプロジェクトは、芸術の境界を拡張する機会と可能性に満ちている。文芸を出発し、視覚芸術に向かった作品が、これから演劇になろうとしているのだ。なによりも大切なのは、これが岡田利規という演劇作家とのコラボレーションであるということだ。芸術の境界を拡張しながらも、二つの国、言語、文化において芸術にたずさわる人々をつなぐことができる。そこに、互いの理解と融合が生まれる。
この物語は、とある国についての物語だ(その国の姿は、人間の身体に例えられている)。その国は権力と統治者がもつ欲望による弾圧を受けて、命令され、奇妙な姿勢に歪められている。その欲望は個人の意志を抑圧し、それに取って代わってしまう。そんな、奇怪で不合理にすら見える姿勢をとらされている国の物語なのだ。異なる人種の、異なる言語と文化をもった国から来た芸術家が、その国をどう見据え、どのような作品を創造するのか、とても興味深い。
ーウティット・ヘーマムーン
現代美術に限らず科学や音楽など他の領域を横断しつつ、年間を通してライブ、映像上映、トーク・シリーズ、滞在制作など多様なプログラムを継続的に実施。「自治」をキーワードに、外部コミュニティとの連携・協働を通じて、展示室での展覧会とは違った実験的なアクティビティが拡張していきます。
原作:ウティット・ヘーマムーン
脚本・演出:岡田利規
主催:国際交流基金アジアセンター、株式会社precog、一般社団法人チェルフィッチュ
助成:アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、公益財団法人セゾン文化財団
金沢21世紀美術館[公益財団法人金沢芸術創造財団]