期間:
2025年5月24日(土) - 2025年9月15日(月・祝)
2025年5月24日(土) - 2025年9月15日(月・祝)
金沢21世紀美術館 展示室
1〜6
一般 450円(360円)
大学生 310円(240円)
小中高生 無料
65歳以上の方 360円
※( )内は団体料金(20名以上)
※当日窓口販売は閉場の30分前まで
月曜日(ただし7月21日、8月11日、9月15日は開場)7月22日、8月12日
美術奨励の日:
会期中の毎月第2土曜日(6月14日、7月12日、8月9日、9月13日)
金沢市民の方は本展を無料でご覧いただけます。本人確認書類(免許証・保険証・住民票など住所の確認できる公的書類)を総合案内でご提示ください。
金沢21世紀美術館 TEL 076-220-2800
本展は、当館所蔵作品のなかから、物質世界への関心を出発点とした作品を紹介します。ガラスが温度の限界を超えて粘土に溶け込み、アナログ信号が閉ざされた回路の中で暴走する猛獣となるとき、物質は沈黙する脇役から、表現の主人公へと変貌します。アーティストたちは「制御可能」であろうとする執着を手放し、挑発的に素材を舞台へと導いていきます。
「マテリアル・フィーバー」というテーマが示すのは、アーティストの物質に対する情熱だけでなく、物質そのものが内包する熱度でもあります。本展で体験していただきたいのは、「アーティストが何を創造したか」ではなく、「アーティストを通して物質がいかに降霊したか」というプロセスです。ここでは、物質は啓蒙的な理性によって飼い慣らされた対象ではなく、むしろ抵抗し、交渉する力を持つ主体として、人間と共に野性に満ちた共生の世界を築いています。
「マテリアル・フィーバー」展へようこそ。アーティストの手引きのもと、五感を総動員して作品を体験することで、世界との「身体的な対話」を再構築し、私たち人間と物質世界との関係性を、あらためて見つめ直してみましょう。
日時:2025年6月14日(土)、6月28日(土)、7月19日(土)、8月9日(土)、8月30日(土)、9月15日(月・祝)
13:30~14:15(暫定)
集合会場:チケットカウンターの裏
※詳細が決定しましたら、当館ウェブサイト、SNSでお知らせします。
地村洋平(招へい) CHIMURA Yohei
アンジェロ・フィロメーノ Angelo FILOMENO
八田豊 HATTA Yutaka
板橋廣美 ITABASHI Hiromi
河合政之 KAWAI Masayuki
ヴィック・ムニーズ Vik MUNIZ
楢原寛子 NARAHARA Hiroko
カールステン・ニコライ Carsten NICOLAI
豊海健太 TOYOUMI Kenta
津守秀憲 TSUMORI Hidenori
山崎つる子 YAMAZAKI Tsuruko
《流れ 02-35 / 02-36》 2002
1930年福井県(日本)生まれ、同地在住。
1951年、金沢美術工芸専門学校(現金沢美術工芸大学)美術科洋画専攻卒業。1960年代の一連の活動によって地方における前衛美術運動の旗手として評価された。1980年頃より視力が低下し失明を宣告された後、「丹南アートフェスティバル」を立ち上げるなど地域社会に密着した活動を展開。
1980年代後半に視力を失った後、八田の創作の支点が視覚から聴覚、触覚などに移した。アクリル絵具をカンヴァスに流し、絵具の滴る音を聴きながら制作する「流れより」シリーズから始め、1990年代地元の越前和紙の素材である楮などの天然素材を用いるようになる。繊維をほぐし、鋭敏な指先の感覚によって軟らかくなった素材と対話しながら新たな秩序を構築してゆく一連の制作プロセスはきわめて身体的な行為である。
シリーズ「始まりの実験」より6点
1984年、千葉県(日本)生まれ、同地在住。
伝統的な金属鋳造やガラス造形技法を学び、物質が変容するきっかけや瞬間に着目して制作を行う。火にかけた金属が溶け流れる動き、熱のやり取りの中でガラスやプラスチックが歪み固まる過程など、素材固有の特性を活かしながら、変化のプロセスそのものを作品に取り込む。形が生まれ、失われ、再び生成される循環を通じて、破壊と創造、自然と人工の境界を探る。変化の中に潜む美しさと危うさ、その両方を通じて、物質と環境、人間との関係を再考する。
《胎動 ’16-9》 2016、《 存在の痕跡》 2025
1986年東京都(日本)生まれ、同地在住。
2012年に多摩美術大学美術学部工芸学科ガラスプログラムを卒業。その後富山ガラス造形研究所、金沢卯辰山工芸工房にて技術を磨き、富山ガラス大賞展2018銀賞、国際ガラス展・金沢2019大賞など数々の賞を受賞。津守はガラス素材の透明性や無機質な質感から抱いた自身の関心をさらに探究するために、東京から北陸へと拠点を移した。2015年から、ガラスと土を混合した素材を用いて、ハイブリッドな素材から生み出される融点の違いによる、生命体のような有機的な形を見極めて冷却する作品を発表。一般的な窯ではガラスは500~850℃で焼成し、陶土は800~1250℃で焼成する。温度差と素材の性質による伸縮量の違いによって割れてしまうため、この異質素材を合わせて焼成することはタブーとされてきた。
津守は、躍動する変化の過程を一瞬に留めておくような造形を追求し、この禁忌に対して数えられないほどのテストピースから適正なガラスと土の配合比率や技法を導き出し、新しい素材の焼成に挑んだ。本作は2017年「第3回金沢・世界工芸トリエンナーレ― 2017 金沢・世界工芸コンペティション」ロナルド・ラバコ審査員特別賞受賞作品である。
《パラダイス・アイランズ》 2002
1963年オストゥーニ(イタリア)生まれ、ニューヨーク(アメリカ)在住。
金工職人の父と洋裁職人の母を持つフィロメーノは、7歳で仕立屋での修行を始め、縫製技術の基礎を身につけた。美術大学卒業後はファッション産業に携わり、ニューヨークに移住した後は舞台衣装の縫製を手掛けてきた。2000年初頭より刺繍作品の制作を開始。シルクや金銀糸、クリスタル等、煌めく素材を用いながら、動植物に頭蓋骨や排泄物、血などを縫い表した作品には、生と死、華麗さと退廃の間で揺れ動く独自の世界観が表れている。2007年には第50回ヴェネツィア・ビエンナーレに出品。
《HOPE-fossil HIV-》 2014
1988年大阪府(日本)生まれ、京都府在住。
金沢美術工芸大学大学院工芸領域漆芸分野で博士学位を取得。2020年4月から2025年3月まで金沢卯辰山工芸工房漆芸工房にて専門員を務め、現在は京都府を拠点として活動。本作は豊海の修士課程修了制作作品である。アルミ複合板をベースに黒色漆の呂色仕上げという技法で、漆表面を炭で研磨することによって鏡面のように仕上げている。その表面上に、極小サイズのうずら卵殻を点描のように配置する。モチーフは広島県立総合技術研究所保健環境センターから提供されたリンパ球から出芽するHIVの顕微鏡画像であり、豊海は卵殻をピクセル状に配置し、漆を顕微鏡写真のフィルムになぞらえて表現している。
《ピクチャー・オブ・チョコレート:ダイバー(シスキンドにならって)》1997
1961年サンパウロ(ブラジル)生まれ、ニューヨーク(アメリカ)とリオデジャネイロ(ブラジル)在住。
自らが作ったオブジェ作品を記録するために撮影したことがきっかけとなり、シリーズで写真作品を発表するようになる。それらは報道写真や美術史上の名作をグラニュー糖やケチャップ、チョコレートなどの素材で再現し、撮影したものである。写し出されたイメージの認識、作品へ歩み寄る過程でそのイメージが予期せぬ物体から構成された集合体であることを知覚
するといった複数の視点を同時に経験させる作風に見られるように、ムニーズは知覚と現実の認識の関係性を独自なスタイルで表現している。
《ミルク》 2000、《 テレフンケン》 2000
1965年カール・マルクス市(旧東ドイツ、現ドイツ)生まれ、ベルリン(ドイツ)在住。
ヴィジュアル・アーティストとしての活動以外に、アルヴァ・ノト(Alva Noto)の名義でサウンド・アーティストとレコード・レーベル「ラスター・ノトン(raster-noton)」の主宰者として活躍。大学ではランドスケープ・デザインを学んだカールステン・ニコライは、絵画、彫刻、建築、サウンド、自然科学、哲学など様々な領域を融合させながら、新たな領域の創出を探求している。近年は空間を変容させることによって、鑑賞者が実際に視覚的・音響的な体験をする実験室のような作品を発表している。
《Video Feedback Configuration No.18 Generator Cube/Mirrored Display》 2022、《Video Feedback Configuration No.19 Plexiglass Box》 2023
1972年大阪府(日本)生まれ、東京都在住。
ヴィデオ・アーティストとして活動し、特にヴィデオ・フィードバックの手法を用いた作品で知られている。
その作品は、テクノロジーを駆使してデジタルとアナログの境界を探り、電子的な暴走状態や偶発性を取り込んで、見る者に特異な視聴覚的体験をもたらす。またそうしたアプローチは、技術的な探究と芸術的表現の関係、作家性と分散された主体についての倫理的問題など、現代アートにおける重要な議論を呼び起こす。
《Soul》 2000
1979年広島県(日本)生まれ。
倉敷芸術科学大学芸術学部工芸科に入学後、ガラスの制作を始める。大学2年時に、型に入れたガラスの塊と粉末を加熱により融合させ、透明部分と半透明部分を混在させる技法を考案する。これが後の制作に決定的な影響を与え、大学4年時に制作した《Soul》は2001年世界工芸コンペティション・金沢にて最優秀賞を受賞。同じ種類ではあるが、塊と粉末という異なった形状のガラスが加熱によって混ざり合い、対流を起こした痕跡がそのまま作品内部に残された。その結果、物質の運動そのものの緊張感、生命の気配といったものが露わにされた。
《三面鏡ではない》 1956/2007(再制作)、《 サファイア》 2003、《The Cans》 2007、《 ブリキのたく(ら)み》 2011
1925年兵庫県(日本)生まれ、2019年同地にて逝去。
山崎つる子は1954年に結成された「具体美術協会」の草創期のメンバーであった。その後もブリキを用いた立体作品、パフォーマンス、絵画作品といった多様な作品の制作を行ってきている。数十年に及ぶ制作活動を通して、山崎は一貫して実像と虚像、視覚・認知・再現をテーマに制作を続け、個と世界との関わりについて独自の視点で表している。
《三面鏡ではない》は、鮮やかな染料が施された高さ3.3メートル、幅6.6メートルのブリキ板がまで繋がれた作品。山崎は1956年の野外具体美術展で《三面鏡》というタイトルで初発表したが、当時の作品は現存せず、2007年当館で開催したコレクション展において作家自身により再制作された。1956年当時の作品タイトルは、作家自身の承諾を得ずに掲載された経
緯があり、再制作を機に作家の意向により《三面鏡ではない》というタイトルに改められた。《ブリキのたく(ら)み》は、2011年当館で開催したコレクション展にあわせて作家が特別にライブペインティングとして会場内で作り上げた作品である。
金沢21世紀美術館[公益財団法人金沢芸術創造財団]
北國新聞社