ポップ・アップ・アート コレクションとパフォーマンスを楽しむ

2024年4月6日(土)~7月15日(月・祝) ※会期中無休
10:00~18:00

インフォメーション

期間:

2024年4月6日(土)~7月15日(月・祝) ※会期中無休
10:00~18:00

会場:

金沢21世紀美術館 交流ゾーン

料金:

無料

出品:
12組20点

お問い合わせ:

金沢21世紀美術館 TEL: 076-220-2800

金沢21世紀美術館は2004年10月に開館し、今年で20周年を迎えます。
記念の年の最初の展覧会は、春から夏に向けて、美術館のコレクションを様々な場所でご覧いただくPop-up Artを開催します。
金沢21世紀美術館はSANAA 妹島和世+西沢立衛がデザインを手がけ、円形で、外壁が全てガラスという特徴的な建物です。今回は、ちょうどドーナツの輪の部分に当たる交流ゾーンに沿って周回する間に、まるでパソコンの画面の最前面に「ポップアップ」するように、次々と作品が目の前に現れるように作品を配置しています。さらに期間中、この交流ゾーンを会場にピアノや琵琶のコンサート、ダンスなど様々なパフォーマンスも繰り広げられます。また、同じ敷地の中にある「プロジェクト工房」では、テクノロジー、環境、人間性の探究といったテーマに取り組むヤノベケンジの作品群を、一堂にまとめて紹介します。
空間の特徴に合わせて展開する12組の作家によるコレクション作品と数々のパフォーマンスを、自然光が溢れ、水平に伸びやかに広がる明るく開放的な空間でお楽しみください。

関連プログラム

《バイサークル》に乗ろう!

期間:2024年4月6日(土)〜6月16日(日)ほぼ毎日開催
※日によっては開催されない場合もございます。ご了承ください。
所要時間:各回20分程度
会場:金沢21世紀美術館本多通り口エントランス(ぎんのゆか)
料金:無料
対象:中学生以上の自転車に乗れる方
イタリア人アーティスト、パトリック・トゥットフオコの体験型作品《バイサークル》に乗って「まるびぃ」を探検してみませんか?

タンクに浮かぼう

期間:4月29日(月・祝)14:00-16:30(1日6回/各回30分程度)
会場:金沢21世紀美術館プロジェクト工房
料金:無料
定員:各回1名
当館では10年ぶりとなるヤノベケンジ《タンキング・マシーン》の作品体験プログラムを開催します。

出品作家(姓の五十音順)

  • ペーター・フィッシュリ ダヴィッド・ヴァイス、ライアン・ガンダー、シルパ・グプタ、小金沢健人、さわひらき、島袋道浩、ローリー・シモンズ、須田悦弘、サラ・ジー、トーチカ、パトリック・トゥットフオコ、ヤノベケンジ

展示作品紹介

  • パトリック・トゥットフオコ
    《バイサークル(シルヴィア、アレッサンドラ、エミコ、リツ)》2004

    《バイサークル(シルヴィア、アレッサンドラ、エミコ、リツ)》 2004

    パトリック・トゥットフオコ
    1974年ミラノ(イタリア)生まれ、ベルリン(ドイツ)在住。

    展示期間:4月6日(土)〜6月16日(日)

    三輪車の形をしたユニークな作品《バイサークル》のタイトルは、「自転車=バイシクル」と、当館の建物の丸い形状「サークル」を掛けた造語である。作家が自分の友人をイメージしてデザインした「ポートレイト」でもある本作品にはそれぞれ、シルヴィアやエミコといった名前が付けられた。モデルとなった人物のどのような部分をどう作家が引き出したのかと思いを馳せるのも楽しい。しかし何といってもこの作品の特徴は、来館者が実際に《バイサークル》に乗って館内を周遊することができる点である。個人の肖像という非常に固有性の高い性質のものが、不特定多数の観客らによって乗り込まれ、新たな運動体としての生命が与えられるのだ。三輪車とすれ違う他の来館者や、ガラスの向こうを歩く通行者には驚きの表情や笑顔が生まれ、様々な関係性の連鎖はさらに広がっていく。

  • 須田悦弘《バラ》2004
    サイズ可変

    《バラ》 2004

    須田悦弘
    1969年山梨県(日本)生まれ、東京都在住。

    《バラ》は、あたかも手折られて地面へ落ちていく瞬間であるかのように空間に浮いている。透けるように薄く彫り上げられた花びら、虫食いの跡を残す葉、とがった赤い棘。須田の木彫りと彩色の技術はどこまでも完璧だ。しかし、木の質感や光沢のない彩色によって、それが木彫りの彫刻であるという主張がぎりぎりのところで感じられる。よく見るとバラの花びらは、風に吹かれて舞い上がったかのように、周囲の壁にまで散っている。須田の作品とその展示は、ふとした瞬間に我々の感覚や認識を静かに、しかし確かに揺さぶるのだ。

    都合により展示内容を一部変更しました。

  • シルパ・グプタ《無題(ここに境界はない)》2005-2006 /2011

    《無題(ここに境界はない)》 2005-2006 /2011

    シルパ・グプタ
    1976年ムンバイ(インド)生まれ、同地在住。

    カシミール地方の領有権をめぐる多国間の争いは、20世紀前半から長きにわたって解決をみない、世界における地域紛争のひとつである。シルパ・グプタはとりわけインド・パキスタン間の衝突を幼少時から間近に感じながら、国境という実際には見えない線によって隔たる2国間の現実を批判している。「ここに境界はない」というシンプルな一文が書かれた黄色いプラ
    スチックテープは、どこかに1本貼っただけでエリアを分けることになるという逆説的な状況を作り出す。内と外を明確に分けようとする人為的な方法は、内側に安全を確保し、外側に異国や異教、異文化といった、同化できないものを生み出してきたのである。今世紀に入り、ますます複雑化する世界の中で、本作品は私たちが信じている自由や安全の本質、想像上の境
    界の存在の再認識を鋭く促している。差異によって起きることへの誤解や無理解を、対立や抵抗ではない形で乗り越えようとする新世代の表現のひとつとしてあらためて見ることもできるであろう。

  • 島袋道浩《箱に生まれて》2001

    《箱に生まれて》 2001

    島袋道浩
    1969年兵庫県(日本)生まれ、沖縄県在住。

    《箱に生まれて》は、段ボール箱自身が作家の母語でもある神戸弁をもって、箱としての人々との交流や自らのアイデンティティについて語りかける、という作品だ。ここでも、人々との交流があるからこそその人生を肯定的に捉えられる、と箱は話す。このように彼の作品は、一見したところの美しさやユーモアのみならず、あらゆるものをそのままに受容する寛大さを湛えながら、人との交わりの喜びと尊さのための環境を飽くことなく生み出し続けている。

  • ライアン・ガンダー
    《あなたをどこかに連れて行ってくれる機械》2020

    《あなたをどこかに連れて行ってくれる機械》 2020

    ライアン・ガンダー
    1976年チェスター(イギリス)生まれ、ロンドン/サフォーク(イギリス)在住。

    ライアン・ガンダーは、日常生活で気にとどめることのない、当たり前の物事に注目し、分析や知的好奇心に満ちあふれた「物語」の中で様々な問いを鑑賞者に投げかける。《あなたをどこかに連れて行ってくれる機械》は、地球上の任意地点の緯度と経度を壁に埋め込まれた発券機からプリントする作品である。偶然の結びつきにもかかわらず、そこはどのような場所で、どうしたら辿り着けるのか、あるいはすでに知っている場所か全く未知の場所かなど、数値が示す場所につながるドアが瞬時に開かれる。与えられた座標によって想像次第で自由な旅が可能であることの示唆は、パンデミックによって移動が制限された時代への応答とも捉えられる。

  • 小金沢健人《蝶を放つ》2015

    《蝶を放つ》 2015

    小金沢健人
    1974年東京都(日本)生まれ、広島県在住。

    《蝶を放つ》は、近年集中的に取り組んできたパフォーマンスの経験がドローイングと結合した映像作品といえる。全てのページにインクを垂らし、様々な色彩の斑点が描き込まれたノート。小金沢自身がこのノートをリズミカルにめくっていく行為は音を伴ってモニターに映し出される。カラフルな斑点がうごめき、出現と消滅を繰り返す。原始的なアニメーションの手法だが、裏抜けや浸透した斑点が見開きページに対称的な構図を作り出し、その動きと音は蝶の羽ばたきを想起させる。

  • さわひらき《airliner》2003、3分

    《spotter》 2003
    《 elsewherte》 2003
    《 airliner》 2003

    さわひらき
    1977年石川県金沢市(日本)生まれ、ロンドン(英国)在住。

    さわひらきの初期の映像作品では、作家が実際に暮らすアパートという最も日常的で私的な空間を舞台に日常と非日常の両極が描かれる。外の世界が私的な空間に入り込む《spotter》では、世界各地を短時間で結ぶ飛行機がさわの室内に進入、浮遊し、群衆が、室内の至るところで頭上を行き交う飛行機を双眼鏡等で追い続ける。日常の中でひっそりと進行する非日常を描き出す《elsewhere》では、やかん、トイレットペーパー、シャンプー等、様々な生活用品に足が生え、さわのアパートの中を歩き始める。ここでの足の動きには、映画発明以前の19世紀末に、動体を連続的に撮影することによって科学的に人間の動きを解明しようとした動体写真術を用いている。外部世界を個の空間に収め、自分の視点で消化するというさわの手法が、《airliner》においては本という世界で表れる。
    ページをめくることにより飛行機が動いているように見えるパラパラマンガ的手法は、映像の原点を想起させるとともに、ページをめくる動きを連続させることによって永遠性を持たせている。

  • トーチカ《PIKA PIKA in Kanazawa 2008》2008

    《PIKA PIKA in Kanazawa 2008》 2008

    トーチカ
    ナガタタケシ:1978年熊本県(日本)生まれ、京都府在住。
    モンノカヅエ:1978年奈良県(日本)生まれ、京都府在住。

    《PIKA PIKA》はペンライトで空中に絵を描き、シャッターを開放して映した光の軌跡の写真を繋ぎ合わせたアニメーション。プロジェクト《PIKA PIKA Project in Kanazawa》は、トーチカが感じ取った金沢という街の印象―人々が時代の変化を受け入れ、さらに工夫し、より多くの人々に受け入れられるように加工しながら再生させている―をもとに街に暮らす人々とともにワークショップを行い、約2万5千枚の写真を編集して一本のアニメーションとしたものである。作品《PIKA PIKA in Kanazawa 2008》では、本編に登場する一本一本の光の軌跡が、関わった人々の時間の長さと深さを示している。

  • ローリー・シモンズ《悔恨のミュージック》2005-2006

    《悔恨のミュージック》 2005-2006

    ローリー・シモンズ
    1949年ファー・ロッカウェイ(米国)生まれ、ニューヨーク在住。

    《悔恨のミュージック》は、ローリー・シモンズが1970年代より発表してきた写真作品の中のオブジェや人形たちを用いた初の映像作品で、おもちゃの人形たちが登場する「グリーン・タイ」、腹話術の人形による「悔恨のミュージック」、ウォーキング・オブジェクト(歩く物)シリーズの人形による「オーディション」の3幕からなるミュージカル仕立ての作品である。この中で、唯一の人間の登場人物として、メリル・ストリープがシモンズの分身に扮し、腹話術の人形とともにかつての恋人との回想シーンを演じている。「こうしていれば今頃は…」というフレーズで始まるコーラスとコミカルでメロドラマ的な歌声の中に、私たちが普段生活する中で内に秘める悔恨や欲望の心情の機微を吐露する模様が、鮮烈な色使いとともに深い哀愁に包まれながら、濃厚に描き出されている。舞台装置、セリフ、歌詞は彼女によるものである。人形と背景との関係の複雑な画像処理、人形や小さな舞台セットに実際の人物を使って撮影する時と同様の照明方法をとるなど、デジタルとアナログを駆使した映画作品である。

  • サラ・ジー《喪失の美学》2004

    《喪失の美学》2004

    サラ・ジー
    1969年ボストン(米国)生まれ、ニューヨーク在住。

    美術館の西側にある階段の吹き抜けに合わせて制作された《喪失の美学》は、多方向からのアプローチが考えられている。1階と地下を折り返しながら繋ぐ階段の構造を意識し、鑑賞者の階段の昇り降りの行動に寄り添うように作品は様々な表情を見せる。螺旋を描いたような構造体が宙に浮く様は上昇・下降の動きを同時に表し、重力と緊張状態を生み出す。その一方で、白を主体とした構造は軽さと明るさを与える。作品には綿棒、ペットボトル等のプラスチック容器、毛糸、メジャー、クリップ等、大量生産される身近でありふれた製品や道具と、黄色、青、オレンジといった建築現場や工具を思わせる色がある種の秩序をもって取り込まれている。こうして複雑に配列されたインスタレーションは、絶妙なバランスを保ちながら、中心性を希薄にし、様々な方向へ緊張状態を分散・展開させる。さらに、取り込まれた植物は全体に生命感を与え、扇風機の風、電気スタンドが発する光はエネルギーを想起させ、建築的構造の中に自然のプロセスを表現しようとしている。

  • ヤノベケンジ《タンキング・マシーン 》1990

    《ミッキーマスク》1991(オリジナル)/ 2000(普及用コピーバージョン)
    《マーキング・ドック》1991
    《ビバ・リバ・プロジェクトースタンダー》2001
    《タンキング・マシーン 》1990
    《ミニ・タンキング・マシーン》2004

    ヤノベケンジ
    1965年大阪府(日本)生まれ、同地在住。

    展示期間:4月6日(土)〜6月9日(日)

    《タンキング・マシーン》は、内部に入ることのできる立体作品。球形のタンクを、人の身体と同じ濃度の食塩水で満たし、体温程度に温める。その中に入って浮かぶと、母胎の中にいるかのような経験が可能となる。外観は、誇張された自画像とも見ることができる。《ミッキーマスク》は、防毒マスクに取り付けられたオペラグラスと料理用のおたまで遠くを見聞きする作品。実際に装着すると、視野が狭いため足下をキョロキョロとしてしまうことになる。《マーキング・ドック》は、スパイ用の偵察機をイメージして作られた作品。人が操縦することで実動する。いずれも未来的なイメージとローテクな素材や技法が掛け合わされている。《ビバ・リバ・プロジェクト― スタンダ―》は、リバイバルをテーマとする最初の作品。放射線を10回受けると立ち上がる幼児をモデルとする。作者はこの作品に「絶望からの再生」の意味を重ねた。チェルノブイリ被災地の荒れ果てた幼稚園にあった人形、そして作家自身の初めての子供の誕生が、この作品が生まれるきっかけとなっている。

  • ペーター・フィッシュリ ダヴィッド・ヴァイス 《無題(コンクリート・ランドスケープ)》2010
    約H12×W100×D200cm

    《無題(コンクリート・ランドスケープ)》2010 《クリン クロン》2010

    ペーター・フィッシュリ ダヴィッド・ヴァイス

    ペーター・フィッシュリ:1952年チューリヒ(スイス)生まれ、同地在住。
    ダヴィッド・ヴァイス:1946年チューリヒ生 まれ、2012年同地にて逝去。

    展示期間:4月6日(土)〜6月9日(日)

    1970年代、概念主義の美術の動きが盛んだった時期に、支配構造への反発としてのパンクの精神に共鳴した彼らは、様々なメディアを柔軟に扱い、身近な素材と明確な仕掛けという手法により、緻密さと偶然性をもって作品を制作した。彼らは日常の物事に注目し、本来の用途を意図的に「誤用」することで、さまざまな意味や解釈を提示した。また、既存の概念を検証・批評し、新たな価値を見出すとともに、世界との関わりや物事の相対性を象徴的に示した。
    《無題(コンクリート・ランドスケープ)》は手作業で成形された長方体。屋外で展示されると、雨や光にさらされ、ほこりがたまり、苔が生え、表面に凹凸が生じ、自然の変化が反映される風景となる。展示期間中には、移り変わりの激しい金沢の春の天気が作品に影響を与えるだろう。音の作品《クリン クロン》は、前述の作品の展示空間に合わせて制作されたものである。ガラスで囲まれた空間に響く柔らかな金属音は、館内の騒音と混ざり合い、即興的な音響空間を生み出す。これらの作品は、当美術館建築の中でも特徴的な、四方をガラス張りにした「光庭」に設置されている。光庭は、「交流ゾーン」と「展示ゾーン」の境界でありながら、「屋内」と「屋外」の境界でもある。外からの視覚的な鑑賞だけでなく、光庭に足を踏み入れることで、音響的な鑑賞体験が得られ、美術館のコンセプトである「内と外の出会い」が生まれる。

交流プログラム

  • ポップアップ・アート パフォーマンスシリーズ

    「まちなかコンサート」より
    琵琶&声楽 コンサート
    日時:4月20日(土)15:00
    フルート&ダンス パフォーマンス
    日時:5月31日(金)15:00
    ピアノ&ピアノ(連弾)コンサート
    日時:6月15日(土)15:00
    いずれも 会場:本多通り口エントランス 料金:無料

    主催:金沢21世紀美術館、アーツカウンシル金沢[公益財団法人 金沢芸術創造財団]
    ※日程・会場・内容は変更になる場合があります

クレジット

主催:

金沢21世紀美術館[公益財団法人金沢芸術創造財団]

助成:

公益財団法人 小笠原敏晶記念財団(ヤノベケンジ作品展示)

後援:

北國新聞社