【中止】コレクション展 2:電気-音

2023年11月18日(土) - 2024年5月12日(日)

インフォメーション

期間:

2023年11月18日(土) - 2024年5月12日(日)
10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)

会場:

金沢21世紀美術館
展示室1、3~6

料金:

一般 450円(360円)
大学生 310円(240円)
小中高生 無料
65歳以上の方 360円
※( )内は団体料金(20名以上)
※当日窓口販売は閉場の30分前まで

休場日:

月曜日(ただし1月8日、2月12日は開場)、12月29日〜1月1日、1月4日、1月9日、2月13日、4月30日、5月7日

美術奨励の日:会期中の毎月第2土曜日(12月9日、2024年1月13日、2月10日、3月9日、4月13日、5月11日)

金沢市民の方は本展を無料でご覧いただけます(要証明書の提示)

お問い合わせ:

金沢21世紀美術館 TEL 076-220-2800

現代の私たちは、自然の環境音から人工の電子音まで、あらゆる「音」と共に生活しています。 音は単なる「聞く・聴く」行為だけでなく、「身体」の感覚を通じて、私たちと世界を結びつける 力を持っています。 当館のコレクションにおいて、「音」と深く関わる作品は「電気」という自然現象でありエネルギーでもある要素とは切っても切り離すことはできません。なぜなら、「音」の記録や再生には「電気」は必要不可欠な存在だからです。そこで、本展では「音」と「電気」の双方、そしてその関係性に焦点を当てて、作品から発せられる電気的な繋がりに耳を傾けていきます。また、本展では、不可視の音が、痕跡や素描、電気信号やデータに変換されてきた美術の動向を探求します。音に形を与えるプロセスや変換の方法論は、レコーダーやプレイヤーなどの「音響再生産技術」の進化 と密接に関係しており、その発達は「記録と再生」や「保存と修復」といった現 代アート全般に関わる課題を浮き彫りにするでしょう。本展は、こうしたテーマ を通し、単にサウンド・アートにとどまらない、科学や哲学などの幅広い領域とかかわりながら、視覚的/音響的に展開されるコレクション作品を紹介します。

髙木遊(アシスタント・キュレーター)

関連プログラム

絵本を読もう

日時:2024年1月28日(日) 11:00-11:40
会場:金沢21世紀美術館 キッズスタジオ
料金:無料
対象:子どもからおとなまで(小さなお子さんは保護者の方とご参加ください)
定員:先着5組

コレクション展2 クロージング・ライブ

日時 : 2024年5月11日(土)・12(日)
会場:金沢 21世紀美術館 シアター 21 もしくは プロジェクト工房
※詳細が決定しましたら、当館ウェブサイト、SNSでお知らせします。

出品作家 (予定、アルファベット順)

  • ・ジョン・ケージ John CAGE
    ・ジャネット・カーディフ & ジョージ・ビュレス・ミラー Janet CARDIFF & George BURES MILLER
    ・毛利悠子 MOHRI Yuko
    ・カールステン・ニコライ Carsten NICOLAI
    ・塩見允枝子 SHIOMI Mieko
    ・エリアス・シメ Elias SIME
    ・田中敦子 TANAKA Atsuko

    [招へい作家]
    ・小松千倫 KOMATSU Kazumichi
    ・涌井智仁 WAKUI Tomohito

出品作家紹介

  • ジョン・ケージ《フォンタナ・ミックス(ダークグレイ)》1982
    金沢21世紀美術館蔵
    ©John Cage Trust.
    photo: KIOKU Keizo

    ジョン・ケージ John CAGE

    1912年ロサンゼルス(米国)生まれ、1992年ニューヨーク(米国)にて逝去。

    ジョン・ケージは実験音楽のパイオニアであり、作曲家、詩人、思想家、キノコ研究家としても知られています。彼は音楽の概念を一新し、電子音響や楽器以外の音、行為、沈黙、不確定性などの要素を取り入れた作曲に取り組みました。また、東洋思想に傾倒し、1951年には《易の音楽》、1952年には《4分33秒》などの作品を通じて、「偶然性の音楽」を確立しました。彼は音楽だけでなく、ドローイング、版画、彫刻など多くの芸術分野でも作品を制作しています。
    また、ケージは1950年代から電子音響を用いた作品の制作にも着手し、ケージによる版画(シルクスクリーン)作品《フォンタナ・ミックス》は、1958年に作曲した同名の楽曲の図形楽譜をもとに制作されました。この図形楽譜は、紙の上に6種類の曲線が描かれ、3枚のフィルムにそれぞれ水玉、格子、直線が刷られています。演奏の際には、これらのフィルムを自由に組み合わせ、それぞれの線や点の交点を音量、トーン、ピッチなどの要素として捉え楽譜を完成させるものです。この手法は楽譜の構成そのものを演奏者に委ねるものであり、ケージが50年代以降に追求した不確定性と偶然性の音楽を代表するものと言えます。本作は、電子音楽のスコアとして、美術館において音というメディアの記録/再生について考えるきっかけとなります。

  • ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー 《驚異の小部屋》2017
    金沢 21世紀美術館蔵
    © Janet Cardiff and George Bures Miller
    photo: KIOKU Keizo

    ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー Janet CARDIFF & George BURES MILLER

    ジャネット・カーディフ:1957年ブリュッセルズ(カナダ)生まれ、グリンドロッド(カナダ)在住。
    ジョージ・ビュレス・ミラー:1960年ヴェグレヴィル(カナダ)生まれ、グリンドロッド(カナダ)在住。


    1995年頃から共同で制作を始め、グリンドロッドを拠点に活動しています。彼らのサウンド・インスタレーションは、舞台装置のような造形性と高度な音響技術に裏打ちされており、「聴く」「見る」といった複合的な知覚経験を提供します。これにより、鑑賞者を彼ら独自の物語に没入させる演劇的な特性を持っています。
    本作《驚異の小部屋》は、古いキャビネットに備わる20個の引き出し毎にスピーカーが組み込まれており、引き出しを開けると異なる音が流れ、閉めると音が止む構造になっています。これらの音源は、歴史上最後のカストラート(変声期以前に去勢された男性歌手)の歌唱からアーティスト自身の朗読まで、多様なサウンド・アーカイブから抽出された効果音、声、音楽で構成されています。鑑賞者は引き出しを開閉することにより音源を自在に操る演奏家の役割を果たし、作品は「楽器」へと変容します。この作品は鑑賞者の作品への能動的な関与を促進し、聴覚や触覚を刺激し拡張するもので、視覚を介さずに作品を体験できる点が特徴的です。また、現代美術において視覚が強調される傾向において、音のアーカイブ性や時間概念などの重要なテーマを提示しています。

  • 毛利悠子《copula》2020
    金沢21世紀美術館蔵
    photo: KIOKU Keizo

    毛利悠子 MOHRI Yuko

    1980年神奈川県(日本)生まれ、東京都(日本)在住。

    毛利悠子は、磁気や電気、音や光、空気の動き、そして重力などの物理現象を用いて、環境において変化する「事象」に焦点を当て、インスタレーションや彫刻を制作しています。
    タイトルの 「copula」が、ラテン語で「連結」を意味するように、本作品はオブジェとオブジェ、鑑賞者と作品、作品と周囲の環境など様々な要素が見えない力で繋がり、私たちが生きている世界のあらゆる関係について目をむけさせます。本作品は設置場所を特定せず、パーツごとの間隔も自由に設定できるため、場と人と作品との間に無限に新しい関係を作り出すことができます。身近にあるオブジェを機械仕掛けの装置に組み込む毛利の表現は、物理現象や電気工学などの知識を取り入れながら、人間と世界との新たな関係性の再構築を提案しています。本作では、あらわになったコンセントが示唆するように、電気による社会的、自然的世界のあらゆるもの同士の繋がりが顕在化します。

  • カールステン・ニコライ 《リアリスティック》1998
    金沢 21世紀美術館蔵
    ©carsten nicolai
    courtesy:Galerie EIGEN+ART Leipzig/Berlin
    photo: FUKUNAGA Kazuo

    カールステン・ニコライ Carsten NICOLAI

    1965年カール・マルクス市(旧東ドイツ、現ドイツ)生まれ、ベルリン、ケムニッツ(ドイツ)在住。

    ヴィジュアル・アーティストであり、アルヴァ・ノト(alva noto)の名前で電子音楽を制作発表しているサウンド・アーティスト。また1999年にレーベル「ラスター・ノートン(raster-noton)」を設立し、多様な実験音楽の作品をリリースしています。ニコライは、絵画、彫刻、建築、サウンド、自然科学、哲学など様々な領域を融合させながら、新たな領域の創出を探求しています。
    本展では、ニコライによるノイズ、パルス(電流)をふくむデジタル・サウンドがモニターの映像入力に接続され、図像が生まれる《テレフンケン》や、ノイズを含むあらゆる音を録音し、集積し、世界の複雑さと繋がりを視覚化した《リアリスティック》、音が物質の振動であるという科学的事実を表現した《ミルク》が展示されます。これらの作品は情報と人間の知覚の関係性について問いかけるだけでなく、当時のテクノロジーによる音響再生機器が定義した音の多様な特性を提示しています。

  • 塩見允枝子《イヴェント小品集》2005
    金沢 21世紀美術館蔵
    © SHIOMI Mieko
    photo: KIOKU Keizo

    塩見允枝子 SHIOMI Mieko

    1938年岡山県(日本)生まれ、大阪府(日本)在住。

    塩見允枝子は東京芸術大学楽理科在学中に小杉武久らとともに「グループ・音楽」を結成し、即興演奏や独自のイヴェント作品にも取り組んできました。 1964年にニューヨークへ渡り、ジョージ・マチューナスが主導し、世界的な展開をみせた芸術運動である「フルクサス」に参加。帰国後はイヴェントをパフォーマンスとしても発展させました。また、国内外で多数のフルクサスの企画に携わるようになり、1990年代には電子テクノロジーに興味を持ち、フルクサスの多数のイヴェントを当時の電子技術で解読した《フルクサス・メディア・オペラ》を企画上演しました。以後、一つのコンセプトを多様な媒体で作品化するトランスメディアの手法により、音楽、パフォーマンス、視覚作品など複数の分野にわたる制作を続けています。
    本展では、「イヴェント」と呼ばれる詩的なアクションの集積でありスコアといえる《イヴェント小品集》や、塩見が展開してきたトランスメディアの概念「ある媒体から次の媒体に移すことによってその創造的な進化を継続させる」の源泉といえる「ウォーター・ミュージック」シリーズ、そして、音楽に物としての形をあたえ、音と言葉と行為の連環をユーモアとともに提示する「音楽の小瓶」シリーズを中心に構成されます。また、いくつかの「イヴェント」と「ウォーター・ミュージック」が、本展招へい作家による解釈と手段において再生されます。

  • エリアス・シメ《綱渡り:音を立てずに 5》2019
    金沢 21世紀美術館蔵
    © Elias Sime 2023. Courtesy the artist and James Cohan, New York. photo: KIOKU Keizo

    エリアス・シメ Elias SIME

    1968年アディスアベバ(エチオピア)生まれ、同地在住。

    エリアス・シメは30年以上にわたり、糸、ボタン、プラスチック、動物の皮、角、布地、ボトルのキャップなどを使用してコラージュと彫刻の作品を制作しています。素材のほとんどは、アフリカで最大級と言われるアディスアベバのメルカート(野外市場)に捨てられたものです。シメは世界中の遠く離れた場所から故郷のアディスアベバまで運ばれ、廃棄された電子機器部品を、機知に富む方法で再利用し、巨大なスケールの複雑な作品を制作しています。シメはこれら作品群を「綱渡り」シリーズと名付けており、これは綱渡りに必要な正確さと規律、そしてテクノロジーが可能にした進歩と環境への有害な影響との危ういバランスにちなんでいます。本展においては、本作をテクノロジーの電気的な世界規模のつながりを示す作品と捉えています。また、タイトルの副題にある「音を立てずに」は、静寂が自由な連想の創造的空間を生み出すことを指摘しています。この静寂は、不可視の配線や電気的な繋がりのメタファーとしても読み取ることができます。

  • 田中敦子《無題(「ベル」の習作)》1954
    金沢 21世紀美術館蔵
    © Kanayama Akira and Tanaka Atsuko Association
    photo: NAKAMICHI Atsushi / Nacása & Partners

    田中敦子 TANAKA Atsuko

    1932年大阪府(日本)生まれ、2005年奈良県(日本)にて逝去。

    田中敦子は大阪市立美術館付設美術研究所に通い、具象絵画や新しい表現形式の模索を始めました。1955年「具体美術協会」へ参加。同会で発表した《作品「ベル」》や人型に電球を取り付け光が明滅する《電気服》などで注目を集めました。1957年頃から《電気服》の電球と電気コードから着想を得た絵画を描き始め、以後一貫して同テーマの絵画を描き続けました。無数の円と線が錯綜する田中の絵画は、国内外で高く評価されています。
    本展では、当館が2007年に制作した《無題「ベル」の習作》に基づく試作品を紹介します。本作は、2メートル間隔で繋がれたベル20個が、モーターによって自動的に順に鳴り響いていく仕組みです。またインスタレーション作品の設計図であり、スコアともいえる《「電気服」に基づく素描》、《無題(「ベル」の習作)》などのドローイングや絵画作品があわせて出展されます。戦後いち早く音や光といった非物質的要素を美術に取り入れた田中敦子のコンセプチュアル・アーティストとしての側面にフォーカスします。

  • [参考画像]
    小松千倫《Sucker》2023
    サウンド
    photo: TAKEHISA Naoki

    小松千倫 KOMATSUKazumichi(招へい作家)

    1992年高知県(日本)生まれ、京都府(日本)在住。

    小松千倫は、音楽家、美術家、DJとして多岐にわたり活動をしています。2022年に京都市立芸術大学大学院の博士後期課程メディア・アート専攻を修了しました。これまでに、angoisse(バルセロナ)、BUS editions(ロンドン)、flau(東京)、Manila Institute(ニューヨーク)、psalmus diuersae(サンフランシスコ)、REST NOW!(ミラノ)など、さまざまなレーベルから複数の名義で多くの音源をリリースしています。また、情報と身体の関係、それに隣接する記憶や伝承の方法に関する研究を行いながら、光や歌を用いた制作を行っています。本展では、展示空間自体が音の再生装置となる《Earless》を発表します。本作では、壁の内部に振動スピーカーが設置され、AIによる自動生成された声、あるいは小松自身の声、そして純粋な振動などが再生されます。音源が不可視となった音響空間は、あらゆる「音/サウンド」と共にある私たちの情報環境を示唆し、「聞く・聴く」だけではない「身体」の知覚を再編する可能性を持つでしょう。また、作品を収集、保存する場としての美術館において、「声」、「音」、「時間」などの非物質的な要素がどのように受け継がれていくのかを問いかけています。

  • [参考画像] 涌井智仁《MONAURALS/FANTASIA》2023
    サウンド、スピーカー、オーディオケーブル、 パワーアンプ、再生機
    photo: WHITEHOUSE

    涌井智仁 WAKUI Tomohito(招へい作家)

    1990年新潟県(日本)生まれ、東京都(日本)在住。

    涌井は美術家、音楽家として、多岐にわたる分野で活動しています。さらに、オルタナティブ・スペースであるWHITEHOUSEのディレクター兼キュレーターとして、アンコントローラブル(制御不能)な総合芸術の場の生成を構想しています。涌井は主にジャンクパーツやAV機器を用いることで、テクノロジーの進化の中で捨て置かれた「有機性」を表現してきました。
    本展では、アナログ音声信号をRCAケーブルで1000メートルにわたって伝送し、その信号の脆弱性や可傷性をあらわにする「Monaurals」シリーズを紹介します。本作では、再生される音は断続、変質し、アナログ音声信号の持つ物質性があらわになります。また、展覧会会場に張り巡らされたオーディオ・ケーブルは、過剰な情報によって分断された私たちを繋ぎ直し、無意識下に遺棄された様々な関係を呼び起こすでしょう。

Images

クレジット

主催:

金沢21世紀美術館[公益財団法人金沢芸術創造財団]

後援:

北國新聞社