期間:
2021年10月16日(土) - 2022年3月13日(日)
10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで)
2021年10月16日(土) - 2022年3月13日(日)
10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで)
金沢21世紀美術館
展示室7~10、交流ゾーン
月曜日(ただし11月1日、11月22日、2022年1月3日、1月10日は開場)、 11月24日(水)、12月29日(水)〜2022年1月1日(土・祝)、1月4日(火)、1月11日(火)
一般:1,200円(1,000円)
大学生:800円(600円)
小中高生:400円(300円)
65歳以上の方:1,000円
※当日観覧券販売は閉場の30分前まで
※( )内は団体料金(20名以上)及びウェブチケット料金
※本展観覧券は同時開催中の「フェミニズムズ/FEMINISMS」(10月16日~2022年3月13日)との共通券です。
※入場当日に限り、「コレクション展1 Inner Cosmology」(対象期間:10月16日~11月3日)及び「コレクション展2 BLUE」(対象期間:11月20日~2022年3月13日)にもご入場いただけます。
日時指定WEBチケット購入について:
入場時間枠:
[1] 10:00~11:00 [2] 11:00~12:00
[3] 12:00~13:00 [4] 13:00~14:00
[5] 14:00~15:00 [6] 15:00~16:00
[7] 16:00~17:00 [8] 17:00~18:00
[9] 18:00~19:00 [10] 19:00~20:00
※ [9][10]は金・土曜日のみ
販売分:前月1日の10:00〜
日時指定WEBチケット購入
・各時間枠の開始直後は、入場待ち列ができることがあります。
・ぎこちない会話への対応策—第三波フェミニズムの視点で展会場入り口にて、購入済みページの二次元コード画面またはプリントアウトしたものをご提示の上、ご入場ください。
・日時指定WEBチケット及び当日券は、指定の入場時間枠ごとの数量限定販売となります(先着順・予定数量に達し次第販売終了)。
友の会会員について:
予約不要でいつでもご入場いただけます。(ただし、当日の混雑状況により入場制限の可能性があります。)
金沢21世紀美術館 TEL 076-220-2800
本展覧会は、ゲストキュレーターのアーティスト・長島有里枝が、1990年代以降に活動を始めた10作家の作品について、フェミニズムの視点から新たな解釈可能性を見いだす試みです。
93年のデビュー以来、長島は、自身を含む同世代の女性写真家をくくった「女の子写真」というカテゴリーに疑問を持ちながら、作品制作と執筆活動を続けてきました。80年代のメディアが喧伝した揶揄的なフェミニスト像に違和感を持っていた若い長島は、「フェミニスト」と自称することを避けつつも、常に男性中心主義的な価値観への問題提起を作品にしてきました。当時の若者のフェミニズム的実践を見えにくくしたそのような態度は、日本における第三波フェミニズムの一つのあり方であったと考える長島は、「運動」や「連帯」の形を取ってこなかった作家たちの作品にもその要素が見いだせるのではないかといいます。このような考察に基づき、長島が9名の作家との対話を経て選んだ作品をご紹介いたします。
目の前の状況に対応するために生み出される様々な実践を、バリエーションに富む作品の中に見いだす機会となれば幸いです。
日時:2021年10月15日(金)19:00〜20:00
会場:「ぎこちない会話への対応策」展示室内からライブ配信
料金:無料
期間:2021年10月16日(土) 16:30〜18:00(開場16:00)
会場:金沢21世紀美術館 レクチャーホール
定員:一般30名(要事前申し込み)
料金:無料
期間:2022年3月5日(土) 13:00-14:30
会場:金沢21世紀美術館 レクチャーホール
料金:無料
定員:一般40名(要事前申し込み)
期間:2022年3月5日(土) 15:30-17:00
会場:金沢21世紀美術館 レクチャーホール
料金:無料
定員:一般40名(要事前申し込み)
若い頃、自分はフェミニストじゃないと思っていた。テレビを通じて知るフェミニストは皆、学者(聡明な人)で、運動家(強い人)で、自分よりずっと年上の女性たちだったから。進学校の落ちこぼれ、連帯や運動のような人間関係を上手く構築する自信もなければ、そもそも自分は女だということがしっくりこず、ただ生きづらさだけ引きずって日々を消費していたわたしが、フェミニストになれるわけがないと思ったし、積極的になりたいとも思えなかった。
それなのに、いざ作品をつくり始めると、それらは決まって社会学的な課題―なかでも特に、フェミニズムが扱うような問題―に言及するものばかりだった。それでもわたしは「わたしはフェミニストだ」と宣言しなかったし、自分の作品をフェミニズム・アートだとは呼ばずにいた。1990年代、わたしと似たような生きづらさを抱え、自己表現を生きる拠りどころとしていた芸術家(美術や音楽や文学など、そのジャンルは多岐に渡った)が沢山いた。彼女たちのなかには、フェミニストだと自負している人も、そうは思っていない人も、自分は違うと明言する人もいた。要するに、フェミニズムの実践が必ずしも「フェミニスト」だけに担われていたわけではないことを、第三波フェミニズムは示したと言える。
半端なフェミニストのわたしが、「こっち側の人」と勝手にみなした9名の作家に声をかけ、彼らのアート実践にフェミニズムの見地から新たな解釈を与えるべく、集まってもらった。フェミニズムの展覧会はどうやって生まれるのか、フェミニストとはどんな人たちか、連帯や仲間とはどういう関係性のことなのか。これといった正解はないだろう問いを巡り、いつものおしゃべりやSNSでのやりとり、真夜中の電話やちょっとした議論を通じてぎこちなく語りあった、わたしたちの暫定的な対応策である本展を、皆さんにも楽しんでいただけたら嬉しいです。
長島有里枝
1973年東京都生まれ。武蔵野美術大学在学中に公募展を経てデビュー、カリフォルニア芸術大学MFA修了。2011年、武蔵大学大学院に社会人枠で入学し、フェミニズムを学ぶ。写真集『PASTIME PARADISE』で、第26回木村伊兵衛写真賞受賞。短編集『背中の記憶』で第23回三島由紀夫賞ノミネート、第26回講談社エッセイ賞受賞。第36回写真の町東川賞国内作家賞受賞。アーティストとして活動する一方、文芸誌や新聞への寄稿、大学で講師を務めるなど、活躍は多岐にわたる。主な著作に『「僕ら」の「女の子写真」からわたしたちのガーリーフォトへ』(2020)、主な作品集に『Self-Portraits』(2020)などがある。
岩根愛 IWANE Ai
木村友紀 KIMURA Yuki
小林耕平 KOBAYASHI Kohei
さとうりさ SATO Risa
ミヨ・スティーブンス-ガンダーラ Miyo STEVENS-GANDARA
長島有里枝 NAGASHIMA Yurie
潘逸舟 HAN Ishu
藤岡亜弥 FUJIOKA Aya
ミヤギフトシ MIYAGI Futoshi
渡辺豪 WATANABE Go
1975年東京都生まれ。1991年単身渡米、ペトロリアハイスクールに留学し、オフグリッド、自給自足の暮らしの中で学ぶ。帰国後、1996年より写真家として活動を始める。ハワイ移民を通じた福島とハワイの関わりをテーマに、2018年『KIPUKA』(青幻舎)を上梓、第44回木村伊兵衛写真賞、第44回伊奈信男賞受賞。離れた土地の見えないつがなりを発見するフィールドワーク的活動を続ける。最新作品集に『A NEW RIVER』(bookshop M)。
本展では、早逝した妹をめぐるスライド作品《My Cherry》と、若くして単身渡米した作家が彼の地で継続的に撮影してきた作品シリーズを展示する。自ら選択することが難しい「家族」に人生のところどころで出会い、受け入れられてきたという作家が、撮ることで受け入れてきた世界が浮かび上がる。
1971年京都府生まれ。1996年京都市立芸術大学修士課程修了。現在京都とベルリンを拠点に活動。イメージとモノをめぐる哲学思考、時空間や次元をテーマにインスタレーション形式の作品を発表している。 主な展覧会に、アーティスツ・スペース(ニューヨーク、2019)、「NEW PHOTOGRAPHY 2015」ニューヨーク近代美術館(2015)、第30回サンパウロ・ビエンナーレ(2012)、第6回イスタンブール・ビエンナーレ(1999)、主な個展に、「Inhuman Transformation of New Year’s Decoration, Obsolete Conception or 2」 CCA Wattis Institute(サンフランシスコ、2016)「無題」IZU PHOTO MUSEUM(静岡、2010)等。
セルフポートレイトとして撮影された身体のパーツを、性を記号的に暗喩する様々な形態に切り抜いた《存在の隠れ家》は、1993年当時、若年化が加速していた性的対象としての女性の商品化と消費へのアイロニーを込めた問題提起といえるだろう。5点組であったオリジナルが散失した為、今回再制作した復刻版を展示する。
1974年東京都生まれ。1999年愛知県立芸術大学美術学部美術科油画専攻卒業。埼玉県を拠点に活動。
第三者に依頼し任意で創作されたテキストを「解釈」し、既製品に手を入れ構成した「オブジェクト」をこしらえ、その「鑑賞方法」を解説する映像作品を制作。映像では、作家が鑑賞者に「オブジェクト」の見方を指南するが、「教える・教えられる」という関係は逆転し、新たなモノの「存在」が生成される。
《殺・人・兵・器》では、「身体に支えられた左・右という観念をなくしてみる」という仮定からはじまる美学者・伊藤亜紗のテキストを元に、手探りするような会話の中から、あらたな「兵器」が生み出されていく。本作は、あらゆる価値基準が恣意的であり、それらが思考の中で解体・転覆可能であることを、私たちに気づかせてくれる。
1972年東京都生まれ。1999年東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻修了。神奈川県を拠点に活動。公共のスペースを中心に、柔らかなフォルムと素材の立体作品を設置し、時に自らその一部となって、身体的なコミュニケーションを発生させる。主な展覧会に、ヨコハマトリエンナーレ2020「AFTERGLOW 光の破片をつかまえる」(神奈川、2020)、「スリシュティ・インテリム 2019」(インド、2019)、「ポート・ジャーニー・プロジェクト メルボルン⇄横浜」象の鼻テラス(神奈川、2013)等。2000年フィリップモリスアートアワード2000グランプリ、1998年パルコアーバナート#7大賞受賞。
さとうの活動拠点に近い横浜市黄金町はかつて青線地帯であり、《メダムK》は、そこで売春を生業としていた女性たちを象徴する作品である。その巨大で柔らかな彫刻は、さとう1人の手により制作された。「ひとりでいること」に正面から向き合い生み出されたひとつの彫刻が、孤独でありながら強い存在感を持って交流ゾーンに現れる。
1973年生まれ。カリフォルニア美術大学にてBFA、カリフォルニア芸術大学にてMFAを取得。ロサンゼルスを拠点に写真、ドローイング、刺繍、版画など様々なメディアを用いて、先祖、移住、フェミニズム、文化的アイデンティティ、また環境汚染などをテーマにした作品を発表している。
本展では、日系四世としての自身のルーツに関連した作品を展示する。家族史に関係の深い写真を元にした版画と刺繍作品からは、複合的な抑圧の中で営まれてきた日系移民の生活の記憶を作品に刻み込むような態度が見て取れる。
1973年東京都生まれ。武蔵野美術大学在学中に公募展を経てデビュー、カリフォルニア芸術大学MFA修了。2011年、武蔵大学大学院に社会人枠で入学し、フェミニズムを学ぶ。写真集『PASTIME PARADISE』で第26回木村伊兵衛写真賞受賞。短編集『背中の記憶』で第23回三島由紀夫賞ノミネート、第26回講談社エッセイ賞受賞。第36回写真の町東川賞国内作家賞受賞。アーティストとして活動する一方、文芸誌や新聞への寄稿、大学で講師を務めるなど、活躍は多岐にわたる。主な著作に『「僕ら」の「女の子写真」からわたしたちのガーリーフォトへ』(2020)、主な作品集に『Self-Portraits』(2020)などがある。
本展の出品作品である《Self- Portrait》は1993年に発表された長島のデビュー作であり、実家で営まれる日常生活を、家族全員がヌードになり再現した写真シリーズである。当時流行していたヘア・ヌード写真への対抗手段として制作された。
1987年上海生まれ。2012年東京芸術大学美術研究科先端芸術表現専攻修了。共同体や個が介在する同一性と他者性について、多様なメディアを用いて考察。主な展覧会に「Sights and Sounds: Highlights」ユダヤ博物館(ニューヨーク、2016)、「りんご宇宙―Apple Cycle/Cosmic Seed」弘前れんが倉庫美術館(青森、2021)、「MOTアニュアル2021―海、リビングルーム、頭蓋骨」東京都現代美術館(2021)等。日産アートアワード2020グランプリ受賞。
《無題》は、潘の祖母が生まれ育った中国の村にかつて存在した風習にインスピレーションを受けて制作されたセルフポートレイトである。嫁いでゆく女性の顔を隠すという風習を自身のヌードで再現する潘は、「隠す」という行為に潜むジェンダーの不均衡を鮮やかに錯乱する。
1972年広島県生まれ。1994年日本大学芸術学部写真学科卒業。2007年文化庁新進芸術家海外派遣制度奨学生としてニューヨークに滞在。2012年に帰国し現在広島を拠点に活動。終戦後70年が経過した広島のいまをとらえた『川はゆく』で2017年第41回伊奈信男賞受賞、2018年林忠彦賞、木村伊兵衛写真賞受賞。主な展覧会に、「私は眠らない」AKAAKA(東京、2009)、「川はゆく」ニコンサロン(東京、2016)、「花のゆくえ」ふげん社(東京、2021)等。
本展では、作家が20年以上にわたり撮りためている「女の人」のポートレイトと、実家のある町のあらゆる場所から見える「城」のシリーズを展示する。被写体は、イメージの固定化から逃れつつ、繰り返し別の姿で現れる謎として、あらゆる角度と距離から捉えられる。
1981年沖縄県生まれ。2006年ニューヨーク市立大学卒業。東京都在住。国籍や人種、アイデンティティといった主題について、映像、オブジェ、写真、テキストなど多様な形態で作品を発表。主な展覧会に「現在地:未来の地図を描くために」金沢21世紀美術館(石川、2020)、「アッセンブリッジ・ナゴヤ2020」名古屋港~築地口エリア一帯(愛知、2020)等。2019年小説『ディスタント』(河出書房新社)刊行。
《1970 and Other Works》は、沖縄返還前の1970年に起きた東京タワー占拠事件をモチーフにしたインスタレーション作品である。ここでは、アメリカと日本、アメリカと沖縄、沖縄と東京というそれぞれの土地の抑圧構造においてジェンダー化された権力関係が、ミヤギの私的な物語を通してあぶり出される。
1975年兵庫県生まれ。2002年愛知県立芸術大学美術研究科油画専攻修了。3DCGを用い物質・光学的な法則から離れた動きや変化を見せるアニメーションを制作。作品がもたらす整合性を欠いた物のあり様や光の振る舞いは、自明のものとして見ている世界を撹乱し、私たちが何を見ているのかを静かに問いかける。主な展覧会に「あいちトリエンナーレ2013」愛知県美術館(2013)、「ロジカル・エモーション―日本現代美術」スイス、ポーランド、ドイツ巡回(2014-2015)等。
《まぜこぜの山》では、作家とその家族の洗いたての衣服が積み重なった「山」がモチーフとなっている。作家の家庭での役割を象徴するオブジェクトは、衣服ごとにランダムな順序に置き換えられたある日の光の中で独特の存在感を放っている。
『ぎこちない会話への対応策ー第三波フェミニズムの視点で』
[執筆]
長島有里枝/さとうりさ/木村友紀/潘逸舟/藤岡亜弥/ミヤギフトシ/ミヨ・スティーブンス-ガンダーラ/小林耕平/岩根愛/渡辺豪/ふぇみにゃん/カナイフユキ/池田あゆみ
編集:長島有里枝、池田あゆみ(金沢21世紀美術館)、姫野希美(赤々舎)
デザイン:木村稔将
発行所:株式会社赤々舎
発行日:2022年2月17日
本体価格:3,630円(税込)
販売場所:金沢21世紀美術館ミュージアムショップ
金沢21世紀美術館[公益財団法人金沢芸術創造財団]
デルタ電子株式会社、株式会社 Slacktide