佐藤浩一 第三風景

2019年4月6日(土) - 2019年9月23日(月)

インフォメーション

期間:

2019年4月6日(土) - 2019年9月23日(月)
10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)

会場:

金沢21世紀美術館 デザインギャラリー

休場日:

月曜日(ただし4月29日、5月6日、7月15日、8月12日、9月16日、9月23日は開場)、5月7日(火)、7月16日(火)、9月17日(火)

料金:

無料

お問い合わせ:

金沢21世紀美術館 TEL 076-220-2800

この度金沢21世紀美術館は、今日でもなお視覚中心的な作品が多数を占める中、視覚のみならず、非視覚的な感覚、聴覚・嗅覚をも揺さぶる新たな表現を取り上げ、美術館活動の次なる可能性を探求する展覧会を開催します。こうした特徴的な表現を、これまでlab.シリーズなど数々の実験的な取り組みを紹介してきたデザインギャラリーで取り上げます。
佐藤浩一(1990-)は、人類学や植物学への関心から、これまで様々な境界線上を曖昧に揺れ動く存在の可能性を考察してきました。「わたし」と「わたしならざるもの」の合間にある、見えないけれど確実にあるその境界を問い、これらの存在がその間で揺れ動きながら共生するこれからを、映像やインスタレーションのみならず、音や香りといった非視覚的なメディウムをも複合的に組み合わせながら表出しています。
本展のタイトル「第三風景」は、風景の進化を自然のみに委ねた空間を指し示すフランスを代表する庭師ジル・クレマンが提唱した概念で、都市の空き地や農村の放棄地・国境地帯など、人間が顧みない、あるいは抑圧している場所を、あえて生物多様性を受け入れられる特権的な場として積極的に評価した言葉です。様々な要素が複雑に混在し得る第三風景は、これからの私たちの社会における、人と植物の関係性の在り方に示唆を与えるものであるといえるかもしれません。本展はこの象徴的な言葉を起点に、イチジクの生殖をテーマとした「Mutant Variations」を通して、佐藤浩一の現在地を俯瞰します。

※予定していた展示替えは都合により中止となりました。

関連プログラム

佐藤浩一 トーク

展覧会の一足先に、作家自ら作品と制作活動について語ります。
日時:2019年4月5日(金) 18:00〜19:00
場所・主催:KUMU 金沢(石川県金沢市上堤町2-40)
料金:無料

作家プロフィール

  • 佐藤浩一 (さとう こういち)

    1990年東京生まれ、2019年東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了、現在東京在住。
    主な個展に「Crepuscular Gardens / 半開花の庭」(Shiseido Gallery、東京 / 2018年)、主なグループ展に「複雑なトポグラフィー―庭園」(栗林公園、香川 / 2015 年)。主な受賞に第12回資生堂art egg入賞(2018年)、東京藝術大学 ARTの力賞(2019年)、東京藝術大学 杜賞(2019年)など 。

Mutant Variations

  • インスタレーションビュー
    撮影:木奥恵三

    [1]
    私は壁に囲まれた広い庭園の中にいる。この庭園はとてもよく管理されていて、寸分の狂いもなく刈り込まれたマツやツツジ、たわわに実をつける様々な果樹があり、花々が目を楽しませない季節はない。(ここに季節はない。)壁は雲に届きそうなほどに高いので、葉や花につくいかなる虫もここへは入ってこられないし、鳥や獣が果実を喰い荒らすこともない。

    [2]
    けれどもこの安寧はもう長くは続かないかもしれない。このところ、壁の向こうからは、何かが崩落するような不気味な音がたびたび聴こえてくるようになった。低い地響きは唸りをあげて、庭園を囲む壁をも揺らしている。ここを管理する人びとは口々に、異民族が攻めてくるとか、壁が倒れたら獣に喰われてしまうとか、あるいは壁の中にもう一つ壁を作れば大丈夫だとか、そのようなことを話していて穏やかではない。

    [3]
    まもなく壁の外側にあるものとの接触によって、庭園の秩序は乱されるだろう。しかし私は、壁の崩壊を必ずしも否定的には捉えない。私たちの秩序の荒廃は、「私たちならざる」秩序や主観性の復権でもある。人間的なるものの後退によって浮かび上がる優美さ、官能、愛を、私は見てみたい。昼でも夜でもない鉛色の園地、液状化する冷たいフィールド。獣のような、あるいは植物のような姿へと変貌を遂げた私たちが、すべるように地を這う様を想像してみる。

    佐藤浩一

Images

クレジット

主催:

金沢21世紀美術館[公益財団法人金沢芸術創造財団]

協力:

KUMU 金沢、高砂香料工業株式会社、株式会社中川ケミカル