トーマス・ルフ展

2016年12月10日(土) - 2017年3月12日(日)

インフォメーション

期間:

2016年12月10日(土) - 2017年3月12日(日)
10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)

会場:

金沢21世紀美術館 展示室

休場日:

月曜日(ただし1/2、1/9は開場)、1/10

料金:

■本展観覧券
一般=1,000円(800円)
大学生=800円(600円)
小中高生=400円(300円)
65歳以上の方=800円

■「工芸とデザインの境目」展との共通観覧券
一般=1,700円(1,400円)
大学生=1,400円(1,100円)
小中高生=700円(600円)
65歳以上の方=1,400円

※( )内は団体料金(20名以上)及び前売りチケット料金

チケット取扱:

チケットぴあ
TEL: 0570-02-9999
Pコード:[本展観覧券] 767-718、[共通観覧券] 767-716
ローソンチケット
TEL: 0570-000-777
Lコード:[本展観覧券] 56908、[共通観覧券] 56971
※販売期間:2017年3月12日まで

お問い合わせ:

金沢21世紀美術館 TEL 076-220-2800

トーマス・ルフ(1958年ドイツ、ツェル・アム・ハルマースバッハ生まれ)は、アンドレアス・グルスキーやトーマス・シュトゥルートらとともにデュッセルドルフ芸術アカデミーでベルント&ヒラ・ベッヒャー夫妻に学んだ「ベッヒャー派」として、1990年代以降、現代の写真表現をリードしてきた存在です。
本展では、世界が注目する写真家の、初期から初公開の最新作までを紹介します。ルフは初期に発表した高さ約2メートルにもなる巨大なポートレート作品で注目されました。それ以降、建築、都市風景、ヌード、天体などさまざまなテーマの作品を展開、それらを通じ、現代人をとりまく世界のあり方についてのユニークなヴィジョンを提示してきました。
私たちの視覚や認識に深く組みこまれた写真というメディアそれ自体も、ルフ作品の重要なテーマのひとつです。ルフは自ら撮影したイメージだけでなく、インターネット上を流通するデジタル画像からコレクションしている古写真まで、あらゆる写真イメージを素材に用い、新たな写真表現の可能性を探究しています。
作品選択や展示構成にルフ自身が参加するなど、作家の全面的な協力を得て実現する今回の展覧会では、未発表の新作を含む作品世界の全貌を紹介します。

関連プログラム

視覚の冒険 —認知科学を通して見るトーマス・ルフ—

講師:伊丸岡俊秀(金沢工業大学情報フロンティア学部教授 専門:視覚認知)
   田中吉史( 同 教授 専門:認知科学)
   渡邊伸行( 同 准教授 専門:表情認知)
日時:2017年3月3日(金) 18:30〜20:00
会場:金沢21世紀美術館 展示室
集合:レクチャーホール前
参加費:無料(当日の本展観覧券が必要です)
定員:先着15名
※定員に達した為、申込受付を終了しました。

絵本を読もう

日時:2017年2月4日(土) 14:00~(40分程度)
集合場所:授乳室前(キッズスタジオ横)
対象:子どもからおとなまで(小さなお子さんは保護者の方とご参加ください)

トーマス・ルフ アーティスト・トーク

講師:トーマス・ルフ
聞き手:増田玲(東京国立近代美術館主任研究員)
    田中義久(本展アートディレクター)
    中田耕市(当館キュレーター)
日時: 2016年12月10日(土) 14:00〜16:00
会場:金沢21世紀美術館 レクチャーホール
料金:無料
定員:80名
※逐次通訳付

関連リンク

プロフィール

  • トーマス・ルフ

    1958年、ドイツ、ツェル・アム・ハルマースバッハ生まれ。
    1977年から85年までデュッセルドルフ芸術アカデミーでベルント&ベラ・ベッヒャー夫妻のもとで写真を学び、ドイツ人家庭の典型的な室内風景を撮り続けた「Interieurs(室内)」シリーズを皮切りに、友人たちの肖像を巨大なサイズに引き伸ばした「Porträts(ポートレート)」で大きな注目を集めました。以来、建築、都市風景、ヌード、天体などさまざまなテーマで作品を制作し、明確なコンセプトに基づいたシリーズとして展開しています。
    1990年代以降は写真作品にデジタル処理を導入するとともに、インターネット上に氾濫する画像にマニピュレーションを加えた「nudes」、「jpeg」といったシリーズ、あるいは探査機がとらえた火星などの天文写真に加工を施す「cassini」「ma.r.s.」など、他者が撮影した写真を素材としてイメージそのものの再構築を試みます。このようにルフは一貫して写真というメディアの特性である情報性と表現性への検証を通じて、私たちが抱いている写真に対する既成概念に揺さぶりをかけ続けてきました。また、教育者としても2000年にデュッセルドルフ芸術アカデミーの教授に就任し2006年まで教鞭をとりました。
    展覧会ではドクメンタ9(1992年)、ヴェネツィア・ビエンナーレ(1995年)など国際展への参加をはじめ、2001年から04年にかけてヨーロッパを巡回した回顧展や2012年のハウス・デア・クンスト(ミュンヘン)での大規模な個展を開催するなど、今日に至るまで世界各国での展覧会が開催され、現代ドイツを代表する写真家として活躍しています。

出展される主なシリーズ

  • 《Porträt (R.Müller)》 1986
    C-print、 210×165cm
    ©Thomas Ruff VG Bild-Kunst、 Bonn 2016

    Porträts

    一見ありふれた証明写真のようにも見えるポートレート。しかし巨大なサイズ(210×165cm)に引伸ばされた作品の前に立つと、そうした印象は一変します。ありふれた人物写真が、どこか不可解で不可思議な存在にすら見えてくるとすれば、そこには写真というメディア独自のメカニズムが働いているのではないでしょうか。ルフの評価を高めた初期作品は、シンプルな手法でさまざまな問題を提起します。巨大なカラープリントという現代写真のフォーマットの先駆となったシリーズでもあります。

  • 《w.h.s. 01》 2000
    C-print、 185×245cm
    ©Thomas Ruff VG Bild-Kunst、 Bonn 2016

    l.m.v.d.r

    「l.m.v.d.r」とは、モダニズム建築を代表するドイツ出身の建築家ルードヴィッヒ・ミース・ファン・デル・ローエの頭文字。ルフはある美術館からミースの建築の撮影を依頼され、さらにミースのある時期の全建築作品を撮影するプロジェクトをてがけます。その過程で、ルフはすでに撮影されたミースの建築写真を徹底的に研究し、そのうえで自ら撮影し、あるいは既存の写真を収集し、さらにはそれらのイメージをデジタル処理することで、この近代建築の巨匠についての視覚的な探求を試みました。

  • 《cassini 10》 2009
    C-print、 98.5×108.5cm
    ©Thomas Ruff VG Bild-Kunst、 Bonn 2016

    cassini

    ルフは少年時代から一貫して宇宙への関心を抱き続けています。2008年に発表された「cassini」はNASA(アメリカ航空宇宙局)が1997年に打ち上げた宇宙探査船cassiniが撮影した土星とその衛星の画像を素材にした作品。ときに抽象的、幾何学的なデザインのようにも見える天体のイメージは、インターネット上で公開されている画像の色彩やトーンを操作することで生み出されたものです。

  • 《ma.r.s. 19》 2011
    C-print, 255×185cm
    ©Thomas Ruff VG Bild-Kunst、 Bonn 2016

    ma.r.s.

    「ma.r.s.」もまたNASAの探査船が撮影した画像を素材とする作品です。2006年以来火星を周回する探査船のカメラは、火星の表面のさまざまな情報を地球に送り続けています。ルフはその画像情報の角度や色彩をデジタル処理で加工することで、このはるか彼方で火星を見つづけるレンズを通じた「風景写真」の可能性を探ります。

    ※本展では「ma.r.s」シリーズの3D作品も展示されます。

  • 《phg.12》 2015
    C-print、 185×310cm
    ©Thomas Ruff VG Bild-Kunst、 Bonn 2016

    photograms

    このシリーズのタイトルとなっている「フォトグラム」とは、1920年代後半にモホイ=ナジ・ラースローらによって開発された写真技法のひとつで、カメラを用いず感光紙上に物体を置いて直接露光し、その影や透過する光をかたちとして定着させる技法です。ルフは2012年よりこの技法を用いた作品制作に取り組みはじめました。従来のフォトグラムではやり直しがきかず、モノクロームの表現に限定されるのに対して、かねてより作品制作にデジタル技術によるマニピュレーションを導入していたルフは、コンピューター上のヴァーチャルな「暗室」で物体の配置と彩色を自在に操作し、最終的な像をつくりあげています。

  • 《Substrat 31 III》 2007
    C-print、 186×268cm
    ©Thomas Ruff VG Bild-Kunst、 Bonn 2016

    Substrates

    インターネット上に溢れる、もはや計測することすら不可能な量の画像は、何らかの現実を表象しうるのでしょうか。それとも単にRGB3色の画素の組み合わせがつくる視覚的な刺激にすぎないと言えるのでしょうか。
    ルフはネット上に氾濫する匿名のポルノグラフィに着目し、「nudes」シリーズの制作をはじめましたが、このシリーズではさらに「イメージ」の解体へと踏み込んでいます。日本の漫画やアニメから取り込んだ画像に原形がわからなくなるまでデジタル加工を繰り返し、画像から意味や情報を剥ぎとっています。

  • 《jpeg ny01》 2004
    C-print、 256×188cm
    ©Thomas Ruff VG Bild-Kunst、 Bonn 2016

    jpeg

    「nudes」や「Substrate」シリーズと並んで、デジタル画像の解体が主題となっていますが、このシリーズではそうしたデジタル画像がもっている「構造」への関心が加わっています。シリーズ名のjpegとはデジタル画像の圧縮方式のひとつで、現在、全世界で使用されもっとも標準的なフォーマットの名称です。圧縮率を高めすぎるとブロックノイズが発生し、画面がモザイク状になってしまうという、この画像フォーマットの特性を用いて、画像の構造そのものを視覚化しています。

  • 《zycles 3065》 2008
    Inkjet print on canvas、266×236cm
    ©Thomas Ruff VG Bild-Kunst、 Bonn 2016

    zycles

    2008年より制作がはじめられたこのシリーズでは、ルフの関心は数学や物理学へと拡がっています。イギリスの物理学者ジェームズ・クラーク・マクスウェル(1831-1879)の著した電磁気学の研究書の中に収められていた銅版画による電磁場の図版に触発されたルフは、さまざま数式がつくる線形を3Dプログラムによって再現し、コンピューター上の3次元空間で再構成しました。ルフによって平面作品へと変換された、こうした曲線の複雑な組み合わせは、惑星の軌道のようにも、あるいは抽象的なドローイングのようにも見えます。

カタログ

  • 編集:東京国立近代美術館、金沢21世紀美術館、読売新聞社
    執筆:増田玲(東京国立近代美術館)、中田耕市(金沢21世紀美術館)
    デザイン:田中義久
    発行:読売新聞東京本社
    仕様:A4変形 / ソフトカバー / 272ページ
    発行日:2016年8月31日

    ※在庫なし

クレジット

主催:

金沢21世紀美術館[公益財団法人金沢芸術創造財団]、読売新聞社

後援:

テレビ金沢

協力:

Lufthansa Cargo AG、全日本空輸(株)