採択事業
・スペースノットブランク
・安住の地『¡play!』
・東京塩麹『ジャーニー』目黒→横須賀→横浜→金沢(仮)
選考委員会総評
今回の「アンド21」には例年を大きく上回る39件の応募が寄せられ、非常にクオリティが高い応募事業が多くありました。
「アンド21」の認知度が高まってきたことをうれしく思うとともに、新型コロナウイルスの影響によって開催予定だった公演が中止や延期になったためという応募動機から、この非常事態をきっかけに「アンド21」の取り組みに全国から目が向いた側面があったと感じました。それは否定的な意味でなく、アーティストの皆さんの創作と発表の場を求める強いエネルギーを改めて感じることにもなりました。
選考にあたっては、本事業が立ち上がった時に据えられた次の3つを評価基準にしています。
「内容が現代的で独自の視点を持ち、新たな芸術創造につながる活動であるか。」
「十分に検討がなされた実現可能な企画であるか。」
「地域の芸術交流や次世代育成につながる可能性があるか。」
これらの評価基準をどう解釈するか、また、どれに軸足を置くかで、私たち選考委員の間に共通する点もあれば相違点もありました。職業や立場、経験が異なりますから、応募者からの同じ資料を検討し、同じ選考基準を読んでも、最初から意見が重ならないのは当然で、むしろそれが複数の選考委員が集まって協議することの意味でもあります。またそれは、応募事業を選考しながら、「アンド21」のあるべきかたちを探していく時間でもありました。前述のように、クオリティの高い事業が多かったため、絞り込むのは大変難航する作業でしたが、各委員の意見が濾紙のようになって、最終的には素晴らしい3団体を選出することができました。
今回選ばれた「スペースノットブランク」、「安住の地」、「東京塩麹」は、美術館が共催するという意味にふさわしく複数のジャンルを跨いで発信できること、オリジナリティを持った活動を行っていること、創作の姿勢そのものがオープンで多くの人に向けて開かれていること、そして団体自体に大きな発展性があるという共通性があります。アーティストが金沢のまちに出会うことで未知の化学反応が起きると期待でき、また、金沢がアーティストから刺激を受ける可能性が大きいことを高く評価しました。
「アンド21」は単に上演場所を提供するだけの事業ではありません。アーティストが美術館を通して新たに金沢という土地や人に出会うこと、それは金沢の芸術文化の発展であると同時に、そのアーティスト自身のキャリアの発展にもなるという点に意味を見いだしています。少々の失敗を恐れずに実験精神をもって変化や発展を求めることが今日の舞台芸術を取り巻く状況下においても、良い影響を与えてくれ、未来につながることを期待しています。
選考委員:井口時次郎、佐々木透子、島敦彦、徳永京子、吉田雄一郎