工芸未来派

2012年4月28日(土) - 2012年8月31日(金)

インフォメーション

期間:

2012年4月28日(土) - 2012年8月31日(金)
10:00〜18:00 (金・土曜日は20:00まで)

会場:

金沢21世紀美術館

休場日:

月曜日(ただし、4月30日、7月16日、8月13日は開場)、7月17日(火)

料金:

<当日>
一般=1,000円
大学生・65歳以上=800円
小中高生=400円

<前売・団体>
一般=800円
大学生=600円
小中高生=300円

※上記チケットにて「コレクション展」も観覧可

前売りチケット取扱:

◇チケットぴあ TEL 0570-02-9999
Pコード:765-067
◇ローソンチケット TEL0570-000-777
Lコード:54043

販売期間:3月28日より8月31日まで

お問い合わせ:

金沢21世紀美術館 TEL 076-220-2800

「工芸未来派」展は、工芸の“現在性”と“世界性”を問う企画展である。つまりこの企画は、工芸が今の表現であり世界共通の表現であるか、という疑問から生まれた展覧会である。

今日の工芸は、他の視覚メディアと同様にポストモダンな時代状況を生きている。アニメーション、マンガ、デザイン、現代アートと同様に、工芸は新たなイメージを紡ぎ出す今日の表現メディアなのである。
それは工芸独自の技法を用い、工芸独自の歴史観を参照しながらも、これまでの工芸とは明らかに異なったアプローチをしている。

例えば、工芸の視覚イメージは、これまでは遠く離れていたアニメーション、マンガ、デザイン、現代アート等と通底している。また、発表の仕方も作家それぞれの独自性を持ち異なっているが世界に向けたものである。このように、ある傾向の作品は大きくは同一の方向を持ち、今日の表現として世界に向けて発信している。

このような表現をとりあえずは、“新しい時代の工芸”“未来に向かう工芸”として、工芸の「未来派」と呼んでみたい。12名の作家による展示は工芸一色であるが、“ 今日のアート”として着目してほしい。

(本展キュレーター:金沢21世紀美術館長 秋元雄史)

関連プログラム

連続アーティスト・トーク

スケジュール / 出演者
4月28日(土)
10:00〜10:30 秋元雄史(本展キュレーター)
10:30〜11:15 青木克世
11:30〜12:15 猪倉髙志
13:30〜14:15 中村信喬
14:30〜15:15 葉山有樹
15:30〜16:15 大樋年雄
16:30〜17:15 野口春美

4月29日(日)
10:00〜10:30 秋元雄史(本展キュレーター)
10:30〜11:15 見附正康
11:30〜12:15 竹村友里
13:30〜14:15 桑田卓郎
14:30〜15:15 中村康平
15:30〜16:15 山村慎哉

キュレーターによるレクチャー「工芸未来派を語る」

担当:秋元雄史(金沢21世紀美術館長)
日時:2012年5月19日(土)14:00〜15:30
会場:金沢21世紀美術館 レクチャーホール
料金:無料(ただし、本展観覧券が必要)

出品作家

  • 青木克世《予知夢XIII》
    2010年
    撮影:末正真礼生

    青木克世(あおき・かつよ)

    1972年東京都生まれ、同地在住。
    青木克世の作品は、工芸というよりも現代アートといった方がしっくりするほど、工芸的な痕跡を残していない完全な表現物である。装飾的展開が表現に直結している。作品は、物語性と装飾性を特徴としている。それは過剰なまでに増殖し、執拗に繰り返される。それはまるで現代社会に蔓延する漠然とした不安を取り去る悪魔祓いか祈祷のようにも見える。

  • 猪倉髙志《かげを纏うかたち2008-1》
    2008年
    撮影:大屋孝雄

    猪倉髙志 (いくら・たかし)

    1962年岐阜県土岐市生まれ、同地在住。
    猪倉髙志の作品は、器物性の残滓はあるものの、立体作品といっていい。それは工芸とデザインあるいは現代アートとの関連を指摘できるものである。ただ、イメージを作り出す上では、強く工芸的な気質が出て造形方法を支配する。白を貴重にした作品の細部は形を作り出すことに集中した結果であり、限りなくシャープで、魅力的な表面を形作っている。精巧な形態は、実は再現性がないものであるが、猪倉の作品は、精度を持つことによって、物が一回性の中で存在していることを教える。

  • 「雲龍庵」北村辰夫《聖杯》
    2011年
    撮影:渡邉修

    「雲龍庵」 北村辰夫 (うんりゅうあん きたむら・たつお)

    1952年石川県輪島市生まれ、同地在住。
    北村辰夫は漆工房の主宰者兼プロデューサーで、「雲龍庵」作品は、北村を棟梁として作り出される。工房制をとるスタイルは一見時代に逆行するようだが、しかし漆の複雑な工程を考えると、高いレベルの作品を制作するためには理にかなっている。北村は、漆の技にこだわる。技法が作品の中心にあるといってもいいほどで、技法の展開が作品を生み出していく原動力にもなっている。それはまさに超絶的な技術力である。

  • 大樋年雄《白楽茶碗 コロラドの土》
    2005年
    撮影:渡邉修

    大樋年雄 (おおひ・としお)

    1958年石川県金沢市生まれ、同地在住。
    大樋焼は350年以上の歴史をもつ。だから大樋年雄の仕事は伝統を踏まえた仕事である。しかし問題は、伝統をどのように捉え、今日化するかということである。彼は、伝統の現代化を旅を通じて行おうとしている。見知らぬ土地で、多くの人と出会いながら行う現地でのワークショップと自分の制作を一つものとして捉えることで、制作を共有し、技法を伝え、伝統を開こうとする。

  • 桑田卓郎《茶垸》
    2009年
    © Takuro Kuwata
    Courtesy of Tomio Koyama Gallery
    撮影: 市川靖史

    桑田卓郎 (くわた・たくろう)

    1981年広島県福山市生まれ、岐阜県土岐市在住。
    マンガ『へうげもの』をきっかけに登場した若手の工芸作家たちの内の一人が桑田卓郎である。桑田の作品の特徴は、奇妙に誇張された形態と明るくポップな色彩感覚にある。作品は、当初、壺や茶碗といった器物を想定しているが、“遊び”とでも呼びたくなるような造形作業の中で次第に溶解していく、その過程の中にあるとでもいえるものだ。その人を喰ったような“遊び”こそ、桑田の作品の明るさを生み出し、最も魅力的なところである。

  • 竹村友里《盌「瞑想」》
    2011年

    竹村友里 (たけむら・ゆり)

    1980年愛知県名古屋市生まれ、石川県金沢市在住。
    竹村友里の作品は、工芸とデザインの関係を指摘できるものである。デザインも工芸と同様に用途性をもっていて、そのことによって他の美術と分けられるが、それを忘れるほどの造形的な遊びに満ちていて、ひとつのオブジェとして表現力を持っている。最近茶碗の制作を続けるが、それがリズミカルに並んだ時に奏でる色彩と形態のハーモニーは明るく美しい。

  • 中村康平《RESURRECTION(物語るために)》(部分)
    1999 年
    撮影:畠山崇

    中村康平 (なかむら・こうへい)

    1948年石川県金沢市生まれ、同地在住。
    「近代の終わり」は、執拗にくり返し言われてきたことである。中村康平の作品は、終から始まる物語のためのオブジェである。断片化したものが寄せ集められて、新しい形を作り出そうとし、力を得ようとするが、どこか成就しない、不能なイメージがつきまとっていく。物へのフェテッシュな傾向とデーモニッシュなイメージ。断片化した世界と継ぎ足しのイメージ。中村も装飾によって物語を紡ぐ作家である。

  • 中村信喬《輝く海》
    2006年

    中村信喬 (なかむら・しんきょう)

    1957年福岡県福岡市生まれ、同地在住。
    中村信喬の作品形式をとりあえずは人形と呼ぶが、そのように言うと作品の本質が脱落してしまう。中村の試みは、仏像から人形までを含めた日本的な彫刻と西洋彫刻の対比という視点から眺めた方がすっきりする。西洋彫刻と日本彫刻の長所を互いに掛け合わせながらハイブリットなフィギュラティブな彫刻に向かう。400年前の天正少年使節を題材にして、海、太陽、月といった象徴的な意味も込め、西洋と日本、世界と辺境といった日本文化の問題を問い続けている。

  • 野口春美《おどろき犬》
    2011年
    撮影:サトウヒトミ
    協力:銀座一穂堂

    野口春美 (のぐち・はるみ)

    1948年東京都生まれ、埼玉県吉見町在住。
    野口春美は、独学で土いじりを始め、粘土による彫刻を作っている。土を手元でこねていくので、大きさはそれほど大きくはない。作られる形は、鬼や妖精、子ども、動物などで、どこか神話の登場人物のようであるが、形態はプリミティブで、大きさと相まって親しみやすい。ただそこには生命感があって、近代が否定してきたアニミズムと関連している。

  • 葉山有樹《龍孫黄帝図鉢》
    2006-07年

    葉山有樹 (はやま・ゆうき)

    1961年佐賀県有田町生まれ、佐賀県武雄市在住
    葉山有樹は、文様の創造から絵付けまでを行う。まず物語を創造し、物語に沿って磁器作品を制作する。物語の多くは歴史に由来し、古代メソポタミア、エジプト、ギリシャ、インド、中国、日本を舞台としている。それは陶磁器の伝播と重なり、強烈な具象性をもつ。葉山有樹作品は豊かな物語性と、比類のない高度な絵付け技術を特徴とする。

  • 見附正康《無題 蓋物》
    2007年
    Courtesy of Ota Fine Arts
    Collection: Ota Fine Arts

    見附正康 (みつけ・まさやす)

    1975年石川県加賀市生まれ、同地在住。
    見附正康の使う技法は、伝統的な赤絵の上絵付けの技法で細密な線描である。作品の特徴は、その線が生み出す絵画的なイメージである。抽象的なパターンによって構成される画面は、これまでの赤絵には見られなかった現代的なもので、それはまるでコンピューターグラフィックスで描いたかのような均質さであり、無限に増殖するパターンである。

  • 山村慎哉《卵殻家形小箱》
    2011年

    山村慎哉 (やまむら・しんや)

    1960年東京都調布市生まれ、石川県金沢市在住。
    山村慎哉は漆を使う。一つ一つの技法は、漆の歴史の中で生まれてきた様々な技法であるが、山村はそれを自由に選択し、自分を表現するための技法として使う。現代的な意匠を凝らしミニマルな形態と技法で作品を仕上げていく。一つひとつは小さく、世界の断片を拾ってきたような詩情あふれる世界が特徴である。

カタログ

  • 『工芸未来派』

    仕様:A4変形(250x210mm)日本語のみ
    頁数:136ページ
    発行:金沢21世紀美術館
    デザイン:下田理恵
    執筆:秋元雄史(金沢21世紀美術館長・本展キュレーター)
    発売日:2012年4月26日

    ※在庫なし

    詳細はこちら

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クレジット

主催:

金沢21世紀美術館 [公益財団法人金沢芸術創造財団]

後援:

NHK金沢放送局、北國新聞社