モナ・ハトゥムは、ミニマリズムの幾何学的なフォルムという特質を取り入れながら、そこに物語性やしばしば政治的内容を織り込んだコンセプチュアルな作品を制作し続けている。30年に渡り制作し続けている彼女の作品は、今日の世界情勢にとって中心的課題である変動する国境や抑圧ということ、同時代を生きるということ、そして、彼女のパレスチナからの亡命という複雑な疎外感ということを具現化するものである。出品作の《+と-》はハトゥムの代表作と位置づけられる。円形の土台の上で周り続けるバーが一定の速度で砂をひっかいてはかき消すという動きは、生存と死、破滅と希望、さらには彼女自身の不確かなアイデンティティといった矛盾をはらむ真実を一挙に表現するものである。

(1952年ベイルート[レバノン]生まれ、ロンドン、ベルリン在住)


《+ と – 》

1994 - 2004
鋼鉄、アルミニウム、砂、電動モーター
27 x 400 cm
オルブライト=ノックス美術館蔵
General Purchase Funds, 2007
©Mona Hatoum