拘束のドローイング
マシュー・バーニーは『拘束のドローイング』というタイトルのとおり、身体に拘束、制限を与えてドローイングを行っています。『拘束のドローイング』の第一作目は、1987年バーニーが学生の時に試みられました。この時は、右の写
真のように床と離れ、フリー・クライミングを思わせる状況でドローイングを描きました。第6作では、トランポリンから飛び上がり天井に絵を描いています。また第7作で、彼は半獣半人サテュロスというモンスターを演じてドローイングを描き、身体とそれを取り巻く世界、あるいは身体内での活動、エネルギーの問題といった主題を展開しました。バーニーは、パフォーマンス作品から制作活動を始め、彫刻を経て、パフォーマンスと彫刻を組み合わせた作品を制作するに至ったのです。こうした流れの中に、この『拘束のドローイング』もあります。彼の科学知識やスポーツ医学から来るアプローチが、こうした表現に貢献しているのはもちろんですが、それ以上に彼の作品には、身体や形の変容といった、彼が一貫して取り組んでいるテーマがあります。バーニーはそれらを、写
真、映像、彫刻といったメディアを重層的、多角的に用い、身体、風景や物語といった伝統的な要素を通じて語っていくのです。
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