EXHIBITION展覧会
主催展覧会2021
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コレクション展2 BLUE
2021年11月20日(土) - 2022年5月8日(日)
光のスペクトルにおいて、赤の長い波長がまっすぐ進むのに対し、青の短い波長は四方に拡散し、空間のなかに溶け込んでゆきます。手につかむことのできない空や水に象徴されるように、青はその深みにおいて認識される色であり、それゆえに古代より人々の憧憬の念を掻き立ててきました。地上に目を移しても、青い色をした自然物は非常にめずらしく、ラピスラズリは洋の東西を超えて珍重されてきました。また、かつて映画監督のデレク・ジャーマンが「ブルーは目に見える闇の色」と語ったように、青は光と闇、生と死のあわいに現れる色でもあります。そして人々が内省へと向かう今にあって、青は私たちの心にもっとも浸透する色と言えるかもしれません。 本展覧会では、金沢21世紀美術館のコレクションを中心に、絵画、彫刻、工芸、映像といったジャンルを横断しながら、国内外のさまざまな文化圏の作家による多様な青の表現を紹介します。また、当館の恒久展示作品であるレアンドロ・エルリッヒの《スイミング・プール》やジェームズ・タレルの《ブルー・プラネット・スカイ》、アニッシュ・カプーアの《L’Origine du monde(世界の起源)》にも新たな光を当てることになるでしょう。そして、招へい作家として、青い色彩と光が印象的なドローイング・アニメーションを制作してきた画家/映像作家の石田尚志の作品も展示します。それぞれの作家が織りなす青の世界を、ぜひ体感してください。
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特別展
ぎこちない会話への対応策—第三波フェミニズムの視点で
2021年10月16日(土) - 2022年3月13日(日)
本展覧会は、ゲストキュレーターのアーティスト・長島有里枝が、1990年代以降に活動を始めた10作家の作品について、フェミニズムの視点から新たな解釈可能性を見いだす試みです。 93年のデビュー以来、長島は、自身を含む同世代の女性写真家をくくった「女の子写真」というカテゴリーに疑問を持ちながら、作品制作と執筆活動を続けてきました。80年代のメディアが喧伝した揶揄的なフェミニスト像に違和感を持っていた若い長島は、「フェミニスト」と自称することを避けつつも、常に男性中心主義的な価値観への問題提起を作品にしてきました。当時の若者のフェミニズム的実践を見えにくくしたそのような態度は、日本における第三波フェミニズムの一つのあり方であったと考える長島は、「運動」や「連帯」の形を取ってこなかった作家たちの作品にもその要素が見いだせるのではないかといいます。このような考察に基づき、長島が9名の作家との対話を経て選んだ作品をご紹介いたします。 目の前の状況に対応するために生み出される様々な実践を、バリエーションに富む作品の中に見いだす機会となれば幸いです。
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特別展
フェミニズムズ / FEMINISMS
2021年10月16日(土) - 2022年3月13日(日)
1990年代以降のフェミニズムは、欧米の若い女性たちを中心にポピュラー文化と結びつき、メディアを通して広がっていきました。日本でも若い女性たちの活躍がメディアを通して紹介され、まさに「ガール・ムーブメント」の様相を呈していました。しかし日本の場合、女性たちからのマニフェストという以上に、ムーブメントがメディアに利用され、女性たちを消費していった側面があったことは否めません。1986年の男女雇用機会均等法、1999年の男女共同参画社会基本法などの法律が整い、男女平等社会が実現したかのように見えましたが、現実社会には結婚や家族という制度、異性愛という社会的規範、女性らしさ男性らしさという通念など、個人と社会の狭間に行き場のない違和感があふれていました。 2020年代の今、インターネットを介して異議を発する小さな声と声がつながり、社会が変わろうとしています。女性のためだったフェミニズムが、社会に違和感を持つあらゆる人たちの力になろうとしています。近年、フェミニズムは複数形で語られ始めました。世代や時代、所属する国家や民族、それぞれの環境や価値観によってフェミニズムの考え方や捉え方は異なります。複数形のフェミニズムが発するメッセージは、多様な考え方を認め合うことこそが社会にとって重要で必要だという視点です。本展ではアーティストたちがそれぞれのまなざしで、ジェンダーを、身体を、社会をどう捉えるのか、そしてその先に何を見ているのか、日本におけるフェミニズムの表現の一端を9名のアーティストの作品からご紹介します。 ●出品リスト・解説
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コレクション展1 Inner Cosmology
2021年6月15日(火) - 2021年11月3日(水・祝)
日々の暮らしの中で、自分たちの力ではどうにもすることができないことがたくさんあります。そうしたことに直面するとき、人々は特定の神仏や森羅万象に宿る神々に思いを告げたり、自分自身の心に問いかけることで、自分だけでは到達することのできない果てしない宇宙に身を浸し、その超越的な力をたよりに、日々の変わらない幸せを願いながら生活を営んできました。私たちの暮らしに寄り添うように、昔も今も私たちの日々の近くには様々な祈りや宗教、内省的な営みがあります。 美術や音楽、そして踊りといった芸術の1つの源泉もこうした日々の営みのそばにありました。見ることのできない世界を現前させる芸術は、人々を果てしない宇宙へと導くメディアとしての機能を担っていました。そうした芸術の役割は、時代が変わっても私たちが日々の安寧を願い暮らし続ける限り、形を変えて現代美術にも表れているのではないでしょうか。本展では、当館のコレクション作品を中心に「宗教」「祈り」「内省」をテーマに現代美術を読み解きます。 この展示を通じて、さまざまな「宗教」「祈り」「内省」の形から垣間見る世界中のあらゆる文化を見つめる機会を持つことで、今日の美術に新たな視点を示すばかりでなく、そうした多様な宗教文化への理解を促す機会となることも期待します。
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特別展
日常のあわい
2021年4月29日(木・祝) - 2021年9月26日(日)
2020 年初頭から始まった新型コロナウイルス感染症の流行は、発生から1年以上がたった現在も収束の兆しが見えないままです。世界中で人々の日常はすっかりその姿を変えてしまいましたが、日本はもとより地震や台風などの自然災害が多く、いつ日常が脅かされるかもしれない不安や緊張と隣り合わせで過ごしてきた人も多いでしょう。 本展覧会は、私たちが意識せざるをえなくなった「日常」について、今一度見つめ直すものです。そもそも日常を日常たらしめているものは何でしょうか。生活の中のちょっとした習慣や日課、家族や地域の中で共有されている約束ごと。とりたてて変化のない時間の流れや風景。しかしながら、当たり前に繰り返されている営みであっても、人によって、家族によって、異なる個々の日常が紡がれています。本展では、意識しないと見過ごしてしまう生活のなかのささやかな創造行為に着目した作品や、突然の喪失や災害に向き合う心の機微を捉えた作品、そして形を変えて続いていく日常をあらわにする作品を介して、日常と非日常のあわいにある「現在」を浮かび上がらせます。 出品リスト
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コレクション展 スケールス
2020年10月17日(土) - 2021年5月9日(日)
ある物や空間について、思っていたより大きい、思っていたより小さい、と感じることがあります。それは、その物や空間の「サイズ」のみによるのではなく、それを経験する身体の位置や視点、また身体に記憶されているものや空間との関係の中で相対的に生まれる経験です。本展覧会では、数値化することのできる「サイズ」に対し、関係性の中で伸縮する「スケール」に焦点を当てます。 それぞれプロポーションの異なる7つの展示室で、当館所蔵作家による作品をご紹介します。風景、空虚、音の響き、人の記憶、植物や無機物の持つ時間の流れ…作品が扱う世界は計測し難く、尺度を切り替えるたびに別の姿を現すでしょう。身体の中で絶えず構築される複数のスケールについて、考える機会となれば幸いです。 出品リスト
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ミヒャエル・ボレマンス マーク・マンダース|ダブル・サイレンス
2020年9月19日(土) - 2021年2月28日(日)
ミヒャエル・ボレマンスとマーク・マンダースは、共にヨーロッパが誇る芸術の歴史を素地に、他に類を見ないユニークな表現で世界に知られる美術家です。この度、はじめて、二人だけの作品で空間構成をする二人展「ダブル・サイレンス」を開催します。 20世紀の終わりから加速したグローバル化の波は欧米を出発して様々な地域に押し寄せ、波頭が割れるように各所に影響を与えました。同時に各地域からは様々な事や物や人を吸い上げて大きなうねりとなり現在に至り、今や文字通り世界全体を覆い尽くしています。いわゆる「現代美術」もまた、この流れと軌を共にしています。ベルリンの壁が崩れた後、美術もまた周縁化することで、いかに地域の歴史文化の独自性を持つかが問われてきました。そして30年ほどが経過した今、美術ではグローバル化と周縁化の間で、地域性に起因する文化差異が重要というよりは、そもそも普遍的な価値とは何かについての内省が始まっています。なぜこのような状況が加速しているかは、いくつか考えられますが、情報の高速化によって世界同時性を実現した現代社会では、価値の普遍性の探求は、特定の地域に限らないことに気づき始めたからではないでしょうか。そしてCOVID-19によって、芸術における内省はグローバル化しています。長きにわたり人間の普遍的価値を探求してきたヨーロッパの美術史を踏まえ、ミヒャエル・ボレマンスとマーク・マンダースもまた、同時代を生きる彼らの内省を私たちと共有しています。バロック美術の伝統を受け継ぎ、人間の暗部を描き出すボレマンスの絵画作品。「建物としてのセルフ・ポートレイト」をコンセプトに、身体の断片が印象的なマンダースの彫刻作品。それぞれメディアは違えど、いずれも複雑な心理状態や関係性を深く掘り下げています。 「ダブル・サイレンス」は沈黙や静寂の中で、作品を通して彼ら自身が対話する空間と時間に、ボレマンスとマンダースが人々を誘う展覧会です。英語の「ダブル」という単語には、掛け合わせや足し上げによる二重や二倍といった意味もありますが、「二つ一緒」「明らかに異なる局面」「対を成す」など、実に多彩な意味が含まれます。いずれも一筋縄ではいかないボレマンスとマンダースによる二人展には、実にふさわしい展覧会名です。 この機会に、80点余りの作品がSANAAによる建築と呼応する空間に足をお運びください。
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アペルト15 冨安由真 The Pale Horse
2021年10月30日(土) - 2022年3月21日(月・祝)
冨安由真(1983-)は、心霊現象や超常現象、夢の世界などを題材に、現実とも非現実とも判別しがたい空間演出を特徴とする、インスタレーション作品を多く発表しています。見るものの知覚や感覚に揺さぶりをかけるような作品世界は、五感、時に第六感を刺激し、ともすれば忌避されがちな不確かで見えないものへの意識を促し、知覚体験の本質を問います。 本展のために制作された新作のインスタレーション作品は、冨安が幼少期に見た夢に構想を得ており、その夢に現れた一軒の小屋を作品の舞台としています。小屋にかけられた絵画《The Pale Horse 蒼ざめた馬》に登場する一頭の馬は、新約聖書のヨハネ黙示録にて「死」を象徴する騎士が乗った蒼ざめた馬に着想を得たものです。展示空間に足を踏み入れた鑑賞者を、現実と虚構とが交錯し合う、奇妙で幻想的な体験へと誘う作品です。 近年では従来の表現メディアである絵画とその周囲を含んだ空間の見せ方や手法に、そのダイナミズムを増している注目作家が手がける、体感を重要視して構築された作品世界は、鑑賞者に対し、見えないものを知覚させるような、新しい体験の機会を創出します。 ハンドアウト
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アペルト14 原田裕規「Waiting for」
2021年6月15日(火) - 2021年10月17日(日)
原田裕規(1989年生まれ)は、クリスチャン・ラッセンや心霊写真など、ある時代の視覚文化の中では確かな位置を占めているにもかかわらず、美術史の周縁にある存在を扱ってきました。 本展は、作家にとって2年ぶりの新シリーズ「Waiting for」を含む映像インスタレーションによって構成されます。 原田は、2017年より、不用品回収業者などによって回収された引き取り手のない写真を集めはじめました。《One Million Seeings》(2019)では、作家自身が、それらを一枚一枚手に取り、見つめる様子が映し出されます。誰かによってかつて見られ、そして見放され、いずれ記憶からも歴史からも消えていくであろうイメージに対して視線を投げかける行為は、24時間にもおよびます。 一方、新作の映像作品《Waiting for》では、オープンワールドゲームの製作に用いられるCGI(Computer-generated imagery)の技術による「100万年前/後の風景」が映し出されます。完全に人工的につくられた世界には、地球に現存する全ての動物の名前を呼び続ける声が響きわたり、強い不在の感覚が呼び起こされるでしょう。 一見対照的な二作品ですが、いずれにも、膨大な情報と向き合い、それを身体化しようとする人間の姿が記録されています。こうした行為を、作家は「Waiting(待つこと/待ちながら)」という言葉で表現しています。かつてあった存在を見つめ、訪れるかもしれない何かを待つ。それは、出来事の前と後に挟まれた空白の時間に身を委ねる行為と言えます。本展は、人々が日々膨大な量の情報を手にすると同時に手放していく現代において、世界と向き合う一つの態度を示す機会となるはずです。 ハンドアウト
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特別展示
ダグ・エイケン: アイ・アム・イン・ユー
2021年4月29日(木・祝) - 11月23日(火・祝)
本展では、所蔵作品の中から当館初展示となるダグ・エイケン《アイ・アム・イン・ユー》を紹介します。ダグ・エイケンは、映像、写真、彫刻、建築的介入からサウンド、インスタレーション、映画まで多岐にわたる作品を手掛けることで知られています。 本作品は、5つのスクリーンで構成された映像インスタレーション作品です。アメリカ郊外の日常的な風景の中で、人間、自然、人工物、幾何学的な図形といったイメージが少女のささやく声や手拍子のリズム、ピアノの旋律に合わせて軽快に重なり、見る者は幻覚のような映像の流れの中に引き込まれます。物語に明確な輪郭がないまま断片化した映像が反復的に繰り返されるうちに、その捉えようのない流動状態の力と速度が身体的に経験され、鑑賞者は映像と音の渦中を彷徨いながら作品を体感することになります。 ダグ・エイケンによる映像インスタレーションのダイナミズムを金沢21世紀美術館の大空間で体感していただける貴重な機会となるでしょう。
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デザインで あそぶ まなぶ つながる コドモチョウナイカイ
2021年4月3日(土) - 2022年3月21日(月・祝)
建築家の式地香織を中心に2014 年に発足したコドモチョウナイカイ事務局は、デザインを通じて子どもたちが自ら課題を発見し、創造的に問題を解決する、柔らかな「理性や感性」を育むワークショップ・プログラムを企画・運営する団体です。子どもたちによるデザインチーム「コドモチョウナイカイ」の活動を見守り支える事務局という役割を担っています。「コドモチョウナイカイ」のデザイン活動は最終的に「おまつり」として完成し、地域とつながります。おまつりをデザインした子どもたちは、おまつりを楽しむたくさんの子どもたちや家族、地域の人たちを目の当たりにします。また、自分たちの活動に寄り添い、暖かく見守るたくさんの大人と触れ合います。コドモチョウナイカイプログラムにおける「おまつり」は子どもたちの成功体験や社会参加の場となっていきます。本展では、2014 年からのコドモチョウナイカイの活動を概観しながら、金沢版コドモチョウナイカイとして、デザイン教育のプロセスを子どもたち、地域の方々と体験するとともに、「デザインで」何ができるのか、金沢での「おまつり」開催に向けて活動をしていきます。 〈展覧会の要素〉 コドモチョウナイカイのアーカイブ 2014年の設立以来、コドモチョウナイカイが取り組んできた活動を壁面で紹介します。コドモチョウナイカイでは、おまつりづくりをみんなのプロジェクトと して共有するために、毎年テーマを設定し、ファッションや建築など様々なデザインを切り口に、そのテーマにアプローチしていきます。 誰でも参加型ワークショップ「みんなでつくろう!デザインの森」 デザインギャラリーのガラス壁面を生かして、来場した方なら誰でも参加できるワークショップ を開催します。4月のスタートは「みんなでつくろう!デザインの森」。ガラス壁面に植えられた抽象的な「たね」からどんな木が成長してくるのか。みんなで考えて描いてみましょう。みんなでつくったデザインの森は、金沢版コドモチョウナイカイの活動の拠点となります。 進行形の金沢版コドモチョウナイカイ 金沢のクリエイターたちと一緒に、金沢版コドモチョウナイカイは展開します。1年をかけてどんなことが起こるのか、子どもたちが中心になってつくっていく予定です。まずは6月のファーストコドモミーティング、「デザインで何ができるのか」を考え、みんなで共有できる「テーマ」 探しから活動をスタートします!
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アペルト13 高橋治希 園林
2020年12月19日(土) - 2021年5月9日(日)
人は「庭園」を巡るとき、何を思うのでしょうか。一人たたずむときも、親しい人と会話しながら楽しむときも、何かしら気持ちを切り替える場所として、庭園はあるのではないでしょうか。高橋治希(1971- )は、美術館の空間に庭園としての「園」を作り出します。一貫して、風景や自然をテーマにインスタレーション作品を制作してきた高橋が、社会に対して声高に叫ぶ作品ではなく、もっと個人的な作品との出会いを生み出したいと行き着いたのが「園林」でした。園林とは、中国の庭を総称する言葉です。園林は、人がゆっくりと巡り歩くにしたがって、さまざまな風景と出会う構造を持っています。一つひとつの風景に思想があり、人生のあらゆる場面が凝縮されています。自分自身の歩みによって、それぞれの人生が心に映し出され、人と宇宙がつながります。 金沢21世紀美術館に作り出される園林には、水があり、山があり、光があり、闇があります。何種にも及ぶ野草は、私たちが共に生きている植物たちです。光を透過する白磁は、触れれば砕けてしまうもろさも持っていますが、大切に扱えばそのままの形で永遠に残り続けます。硬質さともろさを併せ持つ風景から、人生のはかなさや、消えてはまた巡る記憶の数々がより一層強く意識されるに違いありません。 園林は、自然を素材としていますが、決して自然ではありません。複雑な思想を映し出し、見る人を想定しながら造形される「作品」です。高橋は、西洋の美術史の文脈から意識的に離れ、見る人それぞれの精神性を映し出す園林を展示空間に創造し、東洋的なインスタレーション作品の在り方の追究を試みます。
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村上慧 移住を生活する
2020年10月17日(土) - 2021年3月7日(日)
村上慧(1988- )は、東日本大震災のあった2011年3月に武蔵野美術大学造形学部建築学科を卒業しました。震災をきっかけに発泡スチロールを素材にした自作の家を担いで歩き、国内外で移住を繰り返すプロジェクト「移住を生活する」を開始しました。 本プロジェクトは、東日本大震災で多くの人々が家を失ったこと、震災後のコミュニティの衰退、そして震災の直前に友人たちと家を借りる契約をしたけれど、すぐには移動できなかったことへの疑問に始まりました。必要以上に物や金を蓄えるために生きる日常や、公私に空間を分化する社会的な条件や理由について探るこのプロジェクトは、個人の生活がどのように社会に影響を与えるのかを考察します。 本展は、2019年に当館のコレクションとなった作品《移住を生活する 2015.5-2018.9》に加え、村上がプロジェクトを開始した2014年4月5日から現在まで続く「移住を生活する」の全貌を展示する初めての機会となります。 村上が家を担いで移動した先で出会った人々、景色、出来事をつづった日記、ドローイング、写真、そして村上が歩いたルートをたどる地図によって構成される展示空間は、まるで村上とともに移住を生活し、村上が思考し葛藤したその只中にいるかのようでもあります。また、会期中「移住を生活する」を下敷きに始まった「広告看板の家」プロジェクトの最新作も美術館の庭に設置されます。 社会の中で感じ取った違和感や疑問をユニークな方法で私たちに提示し議論の場を作る村上の作品を通して、震災以後の日本の社会で生きることについて向き合い、改めて自分自身の力で考える機会となることを期待しています。
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私たちの、私たちによる、私たちのための美術館
2020年7月18日(土) - 2021年3月21日(日)
2019年10月、金沢21世紀美術館は開館から15周年を迎えました。金沢市の中心部に位置する美術館は、「まちに活き、市民とつくる、参画交流型の美術館」を特徴の一つとし、これまで美術館活動を行ってまいりました。 時が経ち、当時は目新しく見えた美術館の存在も改めて意識することは少なくなってきたかもしれません。また15年の月日は美術館を取り巻く金沢の様子を大きく変え、特に観光地の一つとして有名になった美術館には多くの観光客が訪れるようになった一方、途切れない観光客の波に押されて、金沢市民の「日常」とはだんだんかけ離れたものになってきているのかもしれません。 本展は、15年経った今改めて、「私たちの美術館」を「私たち」が考えるための機会です。「まちに活き、市民とつくる」という想いが込められて始まった美術館は、今の金沢の人々にどう映っているのでしょうか。またどんな未来を描くことを期待されているのでしょうか。様々な切り口から、今の「私たちの美術館」を問いたいと思います。 この展覧会を作るのは、アーティストではなく、ほかでもない金沢21世紀美術館の主人公である地域に住むみなさんや来場者の声。インタビューや「ミュゼミ」と呼ばれる金沢市民を対象に行うゼミを通して、これまでの美術館・これからの美術館について考える参加型の展覧会です。 美術館に来る人も、これから美術館の仲間になる人も、それぞれに「私たちの美術館」と思えるきっかけに、また美術館にとっても展覧会を通じて聞こえたみなさんの声からこれからの美術館を考える、そうした機会になることを期待しています。
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