開催主旨

〜 自分たちの生きる場所を自分たちでつくるために 〜

金沢21世紀美術館 館長 秋元雄史

「金沢アートプラットホーム2008」は、2008 年秋、金沢21 世紀美術館が金沢の街を 舞台に行う、プロジェクト型の展覧会です。

近年、多くのアーティストが美術館という中立的なアートスペースを飛び出して、社会と直接的に関わる活動を多様に展開しています。どのような活動を通して社会に影響を与えることができるのか、どうすれば見えない未来に向かって新しい提案を行うことができるか―アーティストは、このような問いを抱え、生きた社会を実践の場として捉えながら、アートの可能性を探っています。

このような姿勢を持ったアーティストには、いくつかの特徴がみられます。
表現者として先立つよりも、場や基盤をつくるコーディネーターのような立場に身を置き、仕組みや状況の建設へ向かうこと。また、協働的であり、関わり合う人たちとの了解、合意、ときには逆の反応である反発などを含めた相互関係を重視すること。展覧会などの形式や、美術、建築、デザインといったジャンルに捕われず、横断的に表現の可能性を捉えていること。そして、非日常であることよりも日常や場所との親和性、継続性に重点を置いていること―そこでは、協働性と現場主義が優先され、さまざまな人たちと関わりあうことが求められます。

「金沢アートプラットホーム2008」は、このように、社会と自覚的に関係を持ちながら活動するアーティストたちと継続的にプロジェクトを行うことによって、金沢の街に暮らす人々とアーティストが協同する場を生み出してゆこうというものです。

「アートプラットホーム」とは、文字通り、駅のプラットホームをイメージし、そこでは、アートを介して人々が出会ったり、情報が行き交うことで新しい出来事の誘発を可能にします。それによって、会社、家庭、学校、地域、といった社会のさまざまな枠組みのあいだに新たなバイパスをつくること、人々のあいだに対話を生み出し、都市がいきいきとした活動の場となることを目指しているのです。

「金沢アートプラットホーム」―それは、モノローグ(独白)を超えて、社会との関係をより豊かにするダイアローグ(対話)に向かっていく場をつくる試みなのです。

「金沢アートプラットホーム2008」は、それぞれ異なった視点を持つ4 名のキュレーターによって構成されています。キュレーターは、金沢という場所を生かしながら新たな対話の構造を作る重要な作家たちを選出しています。
また、金沢で展覧会や街づくりなどの活動をしている他の組織や団体、個人が「金沢アートプラットホーム2008」と同時期に展覧会や催しを行う場合に、もし一緒に名を連ねてもいいと思ってもらえるならば「金沢アートプラットホーム2008」の連携企画とし て告知をしていきたいと思います。
「金沢アートプラットホーム2008」は、プロジェクト型の展覧会を3 年ごとに継続してゆくことを目指しています。その1 回目に当たる今回は、「自分たちの生きる場所を自分たちでつくるために」というテーマを掲げました。これには、金沢の街に暮らすわたしたちが、アーティストと一緒に社会と関わり、活動していく「プラットホーム」を、共に作り上げていこうという思いが込められています。

一人ひとりが身近な場所で、アーティストと一緒に活動することで、自らの可能性を信じ豊かな生活を作り上げてゆくことが、「金沢アートプラットホーム2008」の目標です。