虚影蜃光 ー Shell of Phantom Light

2023年4月8日(土)〜9月18日(月・祝)

インフォメーション

期間:

2023年4月8日(土)〜9月18日(月・祝)
10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)

会場:

金沢21世紀美術館 デザインギャラリー

料金:

無料

休場日:

月曜日(ただし7月17日、9月18日は開場)、5月14日(日)、7月18日(火)

お問い合わせ:

金沢21世紀美術館 TEL 076-220-2800

工藝美術家、池田晃将(1987-)は螺鈿技法を用いて、データや電気信号といった実体のないものや想像上の動物を描写する作品を発表しています。雨のように降り落ちる数字、角度によって動きを見せる電子回路のような模様。玉虫色の貝の光は、今日の人間の生活を根底から支えている、電流とデータを表しています。骨貝のような長い水管溝を持つ巻貝、5対の翅を持つトンボ。表面に施された螺鈿加飾が、偶像の崇高性を虚構の造形にもたらしました。池田の創造行為は、まるで蜃気楼を吐き出すかの如く、この世に存在しない風景を具現化する貝の妖怪「蜃」のようです。
本展は、池田が制作活動を始めて約10年間の作品を前後期に分けて全14点紹介します。生物、鉱物標本と玩具や書籍など、本人の所蔵品と作品が一堂に展示される会場に、池田による博物誌を目の当たりにすることで、その奇想天外な造形の系譜を直感的に体験していただきます。また、微小の器型で精妙な世界観を表現するために、池田は伝統的な漆技法を伝承しながら、素地の制作に切削機、螺鈿チップの切り出し作業にパルスレーザーなどの新技術を導入しました。作品制作中の各工程及び繊維業界との協働の成果である螺鈿帯の制作風景を映像にて紹介します。

関連プログラム

作家プロフィール

  • 池田晃将(いけだ てるまさ)

    1987年千葉県生まれ、石川県金沢市在住。2016年金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科修士課程工芸専攻修了。2019年金沢卯辰山工芸工房漆芸工房修了。主な展覧会に「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」(国立工芸館、2023年)、「超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA」(岐阜県現代陶芸美術館、2023年)、「ジャンルレス工芸展」(国立工芸館、2022年)、「《十二の鷹》と明治の工芸―万博出品時代から今日まで変わりゆく姿」(国立工芸館、2021年)、「和巧絶佳展-令和時代の超工 芸-」(パナソニック汐留美術館、2020年)など。

展示構成

  • 池田晃将《電光無量無辺香合》(部分)2021
    個人蔵
    H1.4×W5.6×D5.6 cm
    漆、鮑貝、夜光貝、金 / 木曽檜
    撮影:中川暁文

    人間はデータストリームの夢を見るか?

    フィリップ・K・ディックが小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』で描写した近未来では、戦争によって自然が破壊された地球に「生息」しているアンドロイドたちが、貴重な存在になった生き物を手に入れることに夢中になっています。では、生き物として現実世界に生息している我々は、情報技術の存在を根底から支えている、肉眼では見えない電流やデータに対して、どのようなフェティシズムを持っているでしょうか。科学の発展と共にグローバル化した今日、ディックの小説のようなサイエンス・フィクション(SF)のイメージが漫画、映画などの大衆文化を通して全世界を席巻し、古典的な花鳥風月のイメージに取って代わり、文化圏を越えて世界中に共有できるイメージになっています。池田は、金沢卯辰山工芸工房在籍中の2016年から現在に至るまで発表してきた「電光」シリーズで、雨のように降り落ちる数字、角度によって動きを見せる電子回路のような模様など、大衆文化で共有されたイメージを用い、デジタル世界に対する彼の想像を漆芸作品で具象化しています。
    微小の器型で無限のデジタル世界を表現するために、制作には切削機やパルスレーザーなどの機械と新技術が導入され、厚さ0.9mmの素地と幅0.2mmの螺鈿チップが可能になり、細部の表現が極限まで引き上げられました。現代の技術と幻想的な意匠が交差する近作群を間近で鑑賞できます。

  • 池田晃将のアトリエにて
    左側上から二段目は《Neoplasia02》(2014)
    真ん中上から二段目の左側は乾漆作品《Neoplasia03》(2014)
    撮影:中川暁文

    池田晃将の博物誌

    池田は金沢美術工芸大学在学中に「Neoplasia」シリーズを発表しました。医学用語の「腫瘍」、「異常増殖」として知られている「Neoplasia」は、元々ギリシャ語において「新生物」を意味する言葉です。タカラガイを型取って乾漆作品にすることも、巻貝に長い水管溝を生えさせることも、池田は実際に存在する生き物をベースに想像力を働かせ、空想上の造形を生み出しています。本展は、初期の巻「Neoplasia」シリーズから後の「電光」シリーズまでの作品に通底する作家の想像力の源を辿ります。会場には、生物、鉱物標本と玩具や書籍など、本人の所蔵品と作品が一堂に展示されます。池田による博物誌を目の当たりにすることで、その奇想天外な造形の系譜を直感的に体験できます。

  • 池田晃将×株式会社川島織物セルコン
    百千夜光螺鈿帯「八重霞」2022
    個人蔵
    H470×W31×D0.5 cm
    絹、夜光貝、和紙
    撮影:来田猛

    繊維産業との協働

    池田は2021年から、株式会社川島織物セルコンとの螺鈿帯のコラボレーションシリーズを発表しています。本展で展示される予定の螺鈿帯「八重霞」は、螺鈿を施した箔を糸状に細く裁断し、緯糸として絹の経糸に織り込む手法で製作された品です。数ミリ単位の模様を散りばめた池田の意匠を忠実に再現するためには、織物職人の寸分狂わぬ超絶技巧なくしては成り立ちません。繊維産業との協働によって誕生した至極の作品を、その制作風景の記録映像とともに展示します。

Images

クレジット

主催:

金沢21世紀美術館[公益財団法人金沢芸術創造財団]

協力:

株式会社サキヤマデザイン