ディレクター・キュレーター

キュレーション意図

「金沢アートプラットホーム2008」は、展覧会の構造が「プラットホーム型」となっています。すなわち、ある一人のキュレーターが、一人の視点で作家を選択し、展覧会全体を企画推進するのではなく、複数のキュレーターの視点が、ある「プラットホーム」上に共存する構造です。本展は、金沢21世紀美術館の4人のキュレーターが、展覧会のコンセプトに沿って、それぞれの立場から企画推進する複数のプロジェクトの集合体なのです。
  • 秋元雄史(ディレクション/キュレーション)
    美術とはだれのものでしょうか? 美術における公共性とは何かをみんなで考えたい。また、今の時代の社会モデルはどのようなものが最適でしょうか? いまだに死に絶えることのないユートピアという夢が引きずっているものは? 美術という実践を通じて話を進めていきたい。そういう思いから選んだのが4名のアーティストです。彼らは、それぞれ独自の方法によって、新しい社会の枠組みを模索しているように思います。
  • 鷲田めるろ(キュレーション)
    街は人です。各プロジェクトに様々な人々が主役となって参加し、お互い、自分とは異なる相手のことを知り、協働して、プロジェクトを実現しました。例えば、 アトリエ・ワンは、築120年の町家を再生する過程で、その家を守ってきた人、町内の人たち、職人たち、町家を保存するNPO、学生たちと。丸山純子は、19回のワークショップで、1,000本のレジ袋の花を作る過程で、認知症のお年寄りや、ケアマネージャー、ヘルパー、精神病の方、公民館に通うお年寄り、児童館の子供たち、商店街の各店の人たちと。金沢で起きた協働の結果を、どうぞご覧下さい。
  • 黒澤浩美(キュレーション)
    めまぐるしい変化にさらされながら、異なる立場や考えが二項対立では解決しない世の中を見つめるとき、あるいはいかに共生していくかのヒントが欲しいと思ったときに、心に浮かんだアーティストや作品をご紹介します。彼らは自分たちの中に感じる何かの存在を通して考えたことを社会に投射し、偶然に同じ時を生きる喜びや危うさを、今ここに生きる私たちに向かって示しています。こわばった考えや身動きのできない日常ではなく、もがきながらも自由であるためにはどうしたらいいかを、共に考える機会とします。
    アーティスト:牛嶋均塩田千春トーチカ高橋匡太松村泰三八谷和彦
  • 髙橋律子(キュレーション)
    青木千絵と高橋治希の二人は金沢で活動するアーティストです。この地で制作を続けている作家だからこそ、「場」や「人」とのかかわりが意識の深いところでにじみでてくるような表現に繋がり、作品に絡みついてくる空気感が多くを伝えてくれます。藤枝守もまた「音」を通してそうした空気感を伝える作家です。具体的な出来事としての「かかわり」としてより、じっと見つめる、耳を澄ますことによって街、そして人の連なりがじんわりと伝わってくることを期待しています。
    アーティスト:青木千絵高橋治希藤枝守