フィオナ・タン|エリプシス

2013年8月3日(土) - 2013年11月10日(日)

インフォメーション

期間:

2013年8月3日(土) - 2013年11月10日(日)
10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)

会場:

金沢21世紀美術館

休場日:

毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌平日。ただし、8月12日は開場)

展示室14は9月14日(土)から公開します。
[展示作品:《Vox Populi(人々の声) 》]

料金:

■ 本展観覧券(イザベル&アルフレド・アキリザン」展との共通券)
一般=1,000円(800円)
大学生=800円(600円)
小中高生=400円(300円)
65歳以上の方=800円

■「内臓感覚 - 遠クテ近イ生ノ声」との共通観覧券
一般=1,700円(1,400円)
大学生=1,400円(1,100円)
小中高生=700円(600円)
65歳以上の方=1,400円

※( )内は団体料金(20名以上)及び前売りチケット料金

前売りチケット取扱:

◇チケットぴあ tel.0570-02-9999
Pコード
[本展観覧券]765-619
[共通観覧券]765-620

◇ローソンチケット tel.0570-000-777
Lコード
[本展観覧券]52458
[共通観覧券]52449

※いずれも7月3日より販売開始。内臓感覚展との共通観覧券の販売は9月1日まで、本展観覧券は会期中販売。

お問い合わせ:

金沢21世紀美術館 TEL 076-220-2800

フィオナ・タンは1966年、インドネシア・ブカンバル(スマトラ島)生まれ、現在アムステルダム在住の映像作家です。中国系の父とオーストラリア人の母を持ち、少女時代をオーストラリアで過ごした後にヨーロッパに移り住んだという経歴から、多様な文化圏を往来しながら、その複雑さや多層性を自らの内に認める作家でもあります。インドネシアでの反中国人暴動によって離散した自身の家族を追うドキュメンタリー・フィルム《May You Live in Interesting Times(興味深い時代を生きますように)》(1997)は、彼女の文化的多元性を象徴するものとして注目を集めました。

フィオナ・タンの映像表現は、イメージを断片にして再び構成し直すことで、本質や事実にどうしても届かないもどかしさや曖昧さを創出しています。写真やヴィデオに映ったひとつのイメージは揺るぎないのに、事実とフィクションの間を往来する糸が織りなす物語が、見る者にさまざまな憶測を要求してくるのです。展覧会「フィオナ・タン|エリプシス」では、初期を代表する《Linnaeus’ Flower Clock(リンネの花時計)》(1998)(金沢21世紀美術館蔵)から近作《Rise and Fall(ライズ・アンド・フォール)》(2009)、《Seven(セブン)》(2011)まで、映像、写真、インスタレーション作品を紹介し、不連続な時間軸上を行き交う視線や声が共鳴する詩的で静謐な表現を展観するものです。

関連プログラム

作家プロフィール

  • © Marieke Wijintjes

    フィオナ・タン Fiona TAN

    当初、記録フィルムを用いた作品群で知られたフィオナ・タンは、見るものと見られるものを探求し、過去の植民地時代の真実を問いただしてきた。いろいろな作品において肖像の可能性を探求しているが、その芸術・歴史・社会学的文脈を分析しながら、肖像の対象者に対する我々の認識が時代と共に変遷していくことを示唆している。最近の作品では、我々の記憶と心象との関係や不正確な記憶が創造力を刺激することに注目する。全作品を通じて、タンは旅行者や探検家を動機づけるものに関心を示している。我々がいかに自分自身を描写するか、またどんな過程を経て我々は他人の描写を理解するかという問いかけを繰り返し、映像の背後やその限界を超えて現れてくるものを明らかにする。
    タンはドクメンタやサンパウロ、イスタンブール、シドニーでのビエンナーレ、横浜トリエンナーレなど多くの国際展に出品している。2009年のヴェネチア・ビエンナーレではオランダの代表となった。彼女の作品はロンドンのテート・モダン、アムステルダム市立近代美術館、ニューヨークのニュー・ミュージアムなど世界の多くの公共及び民間のコレクションに収められている。最近では個展「ライズ・アンド・フォール」がバンクーバー美術館、スイスのアールガウ美術館、ワシントンのサックラー・ギャラリー、ケベック
    大学モントリオール校のアート・ギャラリーに巡回展示されている。

展示作品紹介

  • 《Seven(セブン)》
    2011年
    デジタル・インスタレーション
    7時間
    © Fiona Tan
    Courtesy of the Artist and Wako Works of Art, Tokyo

    《Seven(セブン)》

    《Seven(セブン)》は生後5か月の女の子、12歳の男の子、40歳の男性から77歳の女性など、7人の人々の肖像を映した全7時間にわたる長大なインスタレーション作品である。登場するのはオランダの普通の家庭環境にある市井の人々で、彼等の表情から親しみやすい感じを受けるが、その構成と照明効果にはフィオナ・タンの細心の注意が払われ、映像全体に緊張感を保っている。7つの異なる人生によって章立てされた、一遍の新しい物語のごとく、感動的で人間的な営みを読み取ることができる。


  • 《Rise and Fall(ライズ・アンド・フォール)》
    2009年
    HD インスタレーション 21分
    作家蔵
    © Fiona Tan
    Courtesy of the Artist and Wako Works of Art, Tokyo

    《Rise and Fall(ライズ・アンド・フォール)》

    2面のスクリーンを使ったインスタレーション作品《Rise and Fall(ライズ・アンド・フォール)》は、カナダにあるナイアガラの滝、ベルギー、オランダで撮影された。年齢の異なる二人の生活の断片を、大量の水が流れる様と共に描き、時間や人生の記憶を思い起こさせる物語を創り出している。同一人物なのかどうか、過去と未来の暗喩なのかどうか、曖昧だが豊穣な時間の流れが含まれる壮大なインスタレーションによって、見る者は身体全体で知覚し、過去と未来、記憶と忘却の間を往来することだろう。



  • 《Linnaeus’ Flower Clock(リンネの花時計)》
    1998年
    SD ヴィデオ 17分
    金沢21世紀美術館蔵
    © Fiona Tan
    Courtesy of the Artist and Wako Works of Art, Tokyo

    《Linnaeus’ Flower Clock(リンネの花時計)》

    フィオナ・タンの初期を彩る本作品で参照されている「リンネの花時計」とは、博物学者カール・フォン・リンネ(1707-1778)が考案した、花の1日における開花・閉花の時間を利用した時計である。朝顔、サボテン、タンポポ、マリーゴールド、紅はこべ、睡蓮、月見草など、時間の経過が植物によってもたらされるという詩的な光景が、フィオナ・タンの作品に現れる花にも見てとれる。時間と共に花は開き閉じるが、その過程が繰り返される映像によって、永遠への思慕と、命に永遠が存在しない自然の成り行きへの抗いが現れている。


  • 《Lapse of Memory(記憶のうつろい)》
    2007年
    HD インスタレーション 24分35秒
    © Fiona Tan
    Courtesy of the Artist and Wako Works of Art, Tokyo

    《A Lapse of Memory(記憶のうつろい)》

    本作品の舞台は、イギリス・ブライトンにあるロイヤルパビリオンという19世紀初頭の建物である。東洋的趣味と西洋の建築様式が混淆したエキゾチックで興味深い建物の中で、フィオナ・タンは、不完全で断片的な記憶を読み戻し、途方に暮れた老人を想像して描写している。ナレーターがヘンリーともエン・リーとも呼ぶその老人は、人気のない建物の中を探索しながら、どこか辻褄の合わない思い出と身についた習慣を通して自分自身を取り戻そうとしているが、その結末は不明瞭なままである。絶妙な撮影と一見単純なモンタージュ写真を使いながら、地理上の起点終点と人生のそれとを重ね合わせ、現実の世界との接点を探り当てようとしているかのようである。

  • 《Brendan’s Isle(ブレンダンの島)》

    この短い音のみの作品は、6世紀のアイルランドにいた修道士ブレンダンの冒険を綴った詩を美しく語ったものである。冒頭部分は、この詩が現存する中で最も古いと思われる版の一つでオリジナルが昔のオランダ語で書かれている。厳しい寒さと危険な状況に立ち向かい、ブレンダンは地上の楽園である島(後にブレンダン島として知られるようになる)を求めて危険な海の旅を続ける。この島は初期の地図に出てくるが、その正確な位置ははっきりしていない。しかし、地理上の正確さや史実についてよりも、流れ出る言葉のリズムに身をまかせ神話の世界に浸っているうちに、次第に時間や場所の感覚が薄らいで、自分が何時どこにいるのかさえ見失ってしまうほどである。

  • 《Vox Populi Tokyo(人々の声 東京)》
    2007年
    写真 インスタレーション
    © Fiona Tan
    Courtesy of the Artist and Wako Works of Art, Tokyo

    《Vox Populi(人々の声)》

    《Vox Populi(人々の声)》は、フィオナ・タンが異なる大陸の5つの国(ノルウェー、シドニー、東京、スイス、ロンドン)でアマチュアによる家族写真を集めた写真によるインスタレーションである。この写真に映るのは彼女と面識のない人々で、約300点にのぼる写真が、そろいの木製額に縁取られたタブローのように並べられている。これらの写真が等価に扱われている均一性と公共性は、個々の写真の個性やプライバシーと対照的である。また、撮影された写真を俯瞰すると、誰もが自分たちの生活や環境の中で関わりを持つ時間や人々を捉えたいという強い要求を持っていることを物語っているのではないかとみえる。多数のイメージの集積によって、それぞれの国における文化的特色を示しているが、歴史・民族による分類やラベル以上に、私的物語である「人々の声」に形と特徴を与え、高い芸術的創造性を生み出している作品である。

    ※本作品は、9月14日(土)から展示します。

関連書籍出版

  • 『フィオナ・タン|エリプシス』

    寄稿:オクウィ・エンウェゾー Okwui Enwezor(キュレーター、批評家、詩人)
       黒澤浩美(金沢21世紀美術館 キュレーター)
    デザイン:林琢真(deco design)
    発行:日東書院

    ※在庫なし

クレジット

主催:

金沢21世紀美術館 [公益財団法人金沢芸術創造財団]

助成:

モンドリアン財団

協賛:

在大阪・神戸オランダ王国総領事館

協力:

NECディスプレイソリューションズ、ワコウ・ワークス・オブ・アート